日本樂器(現:ヤマハ)の1924年製第拾九號オルガンで、ビーズリーの「The Vesper Voluntaries Book 4」から第2曲『ゆるやかな楽章』を
1924(大正14)年製の山葉風琴の動画2本め、全音域にわたって4, 8, 16フィートを備えた13ストップの堂々たる第拾九號です。国産リードオルガンでは珍しく楽器の天板を開けて楽音が前に出てくる仕掛けが備えられており、この動画でもちゃんと開けて弾きました。
1909(明治42)年の共益商社楽器店のカタログに<新製第拾九號>と記載があり、説明には<當拾九號形風琴ハ曩(さき)ニ東京音樂學校ノ御考案ニ基キ日本樂器製造株式會社ニ於テ種々工夫ヲ凝シ製造納附セシ處該校(該校=東京音樂學校)ヨリ風琴トシテ此ニ過グルモノナシトノ御讃辭ヲ博シタルモノニシテ音色善美音量壮大製作マタ堅固ナレバ中等已上(中等以上)ノ學校教授用ニハ尤モ適當ノモノニ御座候>と。
(訳)当19号形リードオルガンはさきに東京音楽学校(現:東京藝術大学)の考案にもとづいて日本楽器で種々工夫を凝らして製造納入したところ東京音楽学校よりリードオルガンとしてこれに過ぎるものなしと御賛辞を博したもので、音色善美音量壮大かつ堅固に作られておりますので中等以上の学校教育用には最も適当なもので御座います。
なるほど、確かにこの躯体全体の豊かで多彩な響きっぷりは素晴らしく、なによりもこの個体の音色はおよそ本邦産とは思えず、ひょっとしたらリードが国産ではなく舶来品なのではないかとすら感じさせられました。まともなオルガンはストップ操作の結果、単純に違う音高の複数の音が重なるだけでなく音色自体がちゃぁんと変化するのですが、この第拾九號ではまさにこのような音色変化を実感できました。大正から昭和ヒト桁くらいまで、実は日本では相当なレベルの文化が花開いていたんだなぁと今さらながら思わされましたぞ。
この個体は女子聖学院中学校・高等学校で生徒向けに開放されているもので、ご縁をいただき演奏することができました。御年100歳超えで普段は積極的には弾かれていないようですが、しっかり丁寧に空気を送って音響振動がしみ込むように弾いたところ、ものの10分程度で素晴らしい響きが甦りました。ただそれはあちこちの部材が動き出していることに他ならず、ともすればビビり振動を引き起こしてしまいますが、ご老体ですからそれをも受け入れるのが弾き手としての御作法でございます。
曲はビーズリー/James Charles Beazley(1850-1929)作曲による「The Vesper Voluntaries Book 4」の第2曲『ゆるやかな楽章』です。 ストップは8フィート2列で+16フィート1列で弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/399492
ビーズリー/James Charles Beazley(1850-1929)はイングランド最南部のワイト島(the Isle of Wight)に生まれています。「The Vesper Voluntaries for the Organ, Harmonium, or American Organ」の Book 40 も Beazley の手によるものらしいですが、それ以外の情報は見つけられていません。
まともに楽器として機能しているリードオルガンは、小学校低学年の授業で使われていた程度の楽器、という足踏みオルガンのイメージとは全く異なる堂々たる楽器です。管楽器や歌唱のイメージは「レガート」という表現に取り組む上で必要不可欠。リードオルガンは管楽器かつ持続音を得意とする楽器で、しかも空気を足踏みペダルで送るのですから工夫次第で強弱表現が可能、というかなり楽しい楽器です。素直で温かくしかも演奏者の悪知恵w次第で管楽器としての多種多彩な表現ができる魅力は、一部の世界だけに留めさせるにはあまりにも惜しい世界です。




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