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カテゴリー「音楽>楽器>リードオルガン」の143件の記事

2024年5月17日 (金)

八ヶ岳リードオルガン美術館所蔵、キンボール社1900年代初頭製らしき豪華棚付きリードオルガンで「Le trésor des chapelles」第24巻『Morceaux religieux, op.25』から、第4曲「Communion」を

昨年2023年8月末に「八ヶ岳リードオルガン美術館」所蔵のアメリカはキンボール社の名器、おそらく20世紀初頭に作られた豪華棚付きリードオルガン(9ストップ)を使わせていただきました。「八ヶ岳リードオルガン美術館」は小海線の甲斐小泉駅からワリと急な坂道を20分ほど登った別荘地の一角にある瀟洒な建物で、所狭しとリードオルガンやらハルモニウムやらが並んでいて試奏もできる素敵な場所です。ココはけっこう前から気になっていたのですが、コレほど大切な場所をなんとなく後回しにしていた自分ってばほんっっっと見る目がないなぁ💦

Le trésor des chapelles」は1864〜1865年になんと30冊も刊行された、小さめのオルガンまたはハルモニウムのための曲集です。当時、教会が増えてオルガン奏楽者の需要が高まっていたにも関わらずそのために必要な安価で難しくない曲集はまだまだ足りていなかったようで、それを解消するべく一挙に30冊もの作品集を刊行した見識、素晴らしいと思います。30冊全てが作曲家でありオルガニストでもある作者の手による作品集で、実用的にも文句なかったことでしょう。

Le trésor des chapelles」の第24巻は Édouard Schluty(1826-1866) なる作曲者による曲集で Morceaux religieux, op.25 と題されていおり、この動画はその四曲目の Communion です。Édouard Schluty は、フランス南部アルザス地方のPézenas/ペズナの教会のオルガニストを1851年から1866年に短い生涯を終えるまで努めており、その作品が弟の Jean Joseph Schluty(1829-1920) が1828年に寄稿した作品の中に1曲引用されています。Édouard Schluty はこの第24巻を見る限り美しい作品を生み出せる霊感に恵まれた作曲家に思え、弟がその早すぎる死を悼んで1曲引用した・・・というのはいかにもありそうに思えます。



このキンボール社のリードオルガンは1900年前後に北米で隆盛を極めていた豪華棚付きリードオルガンの生き残り。小学校低学年の授業で使われていた程度の楽器、というリードオルガンのイメージとは全く異なる堂々たる楽器です。管楽器や歌唱のイメージは「レガート」という表現に取り組む上で必要不可欠。リードオルガンは管楽器かつ持続音を得意とする楽器で、しかも空気を足踏みペダルで送るのですから工夫次第で強弱表現が可能、というかなり楽しい楽器です。素直で温かくしかも演奏者の悪知恵w次第で管楽器としての多種多彩な表現ができる魅力は、一部の世界だけに留めさせるにはあまりにも惜しい世界です。

2024年3月26日 (火)

Caleb Simper(1856-1942)「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」第2巻から第9曲『Adagio』を、1893年ごろシカゴコテージオルガン社の豪華棚付きリードオルガンで

才気堂、渡邉祐治さんからの足踏みオルガンがピアピットに展示ちぅですぞ(*´-`)

イギリスのオルガニストそして作曲家のカレブ・シンパー/Caleb Simper(1856-1942)の「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」シリーズの第2巻から、第9曲『Adagio』を、ボストン近郊の Bridgewater で1930年代始めまで頑張っていたパッカード社1905年製の大型棚つきリードオルガンで弾きました。このベル社のリードオルガンは長い(=低い)16フィートのストップが低音側だけでなく全音域にわたって使えるのが特徴ですが、この動画では単純に8フィート1本に甘い揺れが入る「VOX HUMANA」をかけてみました。「VOX HUMANA」は要は「human voice」でして、扇風機に向かって声を出すと細かく強弱がついてあたかも人の声のような表情っぽくなるという、いかにもアナログな音質変換装置です。コレ、音程はほぼ変わらないのでヴィブラートではないのですが、厳密なコト指摘しても仕方ないのかなぁとかなんとか😅

カレブ・シンパーは普通の愛好家にとって親しみやすく平易な作品を数多く作曲しており、それこそ何万冊の単位でむちゃくちゃに「売れて」いたんですね〜。この「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」シリーズだけでも12冊出版されておりまして、実はこのうちオマケが入っているものが5冊もあるという、まぁ似たような雰囲気の曲も少なくはないにしても、多作家ってぇヤツはホントにスゴいんだなぁと。

・お問合せ→リードオルガン修復:才気堂、渡邉祐治
https://pianoreedorgan.jimdofree.com/

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html



このベル社のリードオルガンは1900年前後に北米で隆盛を極めていた豪華棚付きリードオルガンの生き残り。小学校低学年の授業で使われていた程度の楽器、というリードオルガンのイメージとは全く異なる堂々たる楽器です。管楽器や歌唱のイメージは「レガート」という表現に取り組む上で必要不可欠。リードオルガンは管楽器かつ持続音を得意とする楽器で、しかも空気を足踏みペダルで送るのですから工夫次第で強弱表現が可能、というかなり楽しい楽器です。素直で温かくしかも演奏者の悪知恵w次第で管楽器としての多種多彩な表現ができる魅力は、一部の世界だけに留めさせるにはあまりにも惜しい世界です。

2024年2月12日 (月)

Caleb Simper(1856-1942)「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」第2巻から第3曲『Offertoire』を、戦前1930年代前後の日本樂器 第八號 リードオルガンで

戦前1930年代前後製造、未修復の日本樂器 第八號 リードオルガンで、イギリスのオルガニストそして作曲家のカレブ・シンパー/Caleb Simper(1856-1942)の「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」シリーズの第2巻から、第3曲『Offertoire』を弾きました。

この楽器はあざみ野ガーデンズにほど近い、ガーデニング・エクステリアの『LEAD(リード)』の店舗内にストリートオルガンと言う位置づけで無料開放されている楽器です。なんでも社長のおばあさまだったかの蔵でこの楽器を見つけて、雰囲気も良くなりそうだし置いてみたのだとか。リードオルガン(=足踏みオルガン)は100万台を優に超えるくらいの台数作られたという説もあり、旧家の蔵から出てくるというのはリードオルガンあるあるだったりするんですよ〜😉

ただこの楽器は修復の手が全く入っていないので出ない音も数音で雑音も数音、足踏みペダルからは軋み雑音で演奏会の用途にはさすがに使えません。ただ置いてあって雰囲気を愉しむというストリートの楽器らしい存在ですが、LEADあざみ野の建物はなかなか素直な音がする場所でして、戦前の日本製の楽器独特の低音域の粘りのある充実感は充分に愉しめました。展示してある小物類も実にセンス良く、とっても心地よい空間でした。

・LEADあざみ野
https://yokohama-lead.net/

カレブ・シンパーは普通の愛好家にとって親しみやすく平易な作品を数多く作曲しており、それこそ何万冊の単位でむちゃくちゃに「売れて」いたんですね〜。この「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」シリーズだけでも12冊出版されておりまして、その第2巻の第3曲がこの『Offertoire』です。実はこの「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」はオマケが入っているものが5冊もあるという、似たような雰囲気の曲もまぁ少なくはないにしても、多作家ってぇヤツはホントにスゴいんだなぁと思わされます。

2024年1月 4日 (木)

八ヶ岳リードオルガン美術館所蔵、キンボール社1900年代初頭製らしき豪華棚付きリードオルガンで「Le trésor des chapelles」第24巻『Morceaux religieux, op.25』から、第1曲「Offertoire」を

昨年2023年8月末に「八ヶ岳リードオルガン美術館」所蔵のアメリカはキンボール社の名器、おそらく20世紀初頭に作られた豪華棚付きリードオルガン(9ストップ)を使わせていただきました。「八ヶ岳リードオルガン美術館」は小海線の甲斐小泉駅からワリと急な坂道を20分ほど登った別荘地の一角にある瀟洒な建物で、所狭しとリードオルガンやらハルモニウムやらが並んでいて試奏もできる素敵な場所です。ココはけっこう前から気になっていたのですが、コレほど大切な場所をなんとなく後回しにしていた自分ってばほんっっっと見る目がないなぁ💦

Le trésor des chapelles」は1864〜1865年になんと30冊も刊行された、小さめのオルガンまたはハルモニウムのための曲集です。当時、教会が増えてオルガン奏楽者の需要が高まっていたにも関わらずそのために必要な安価で難しくない曲集はまだまだ足りていなかったようで、それを解消するべく一挙に30冊もの作品集を刊行した見識、素晴らしいと思います。30冊全てが作曲家でありオルガニストでもある作者の手による作品集で、実用的にも文句なかったことでしょう。

Le trésor des chapelles」の第24巻は Édouard Schluty(1826-1866) なる作曲者による曲集で Morceaux religieux, op.25 と題されていおり、この動画はその一曲目の Offertoire です。Édouard Schluty は、フランス南部アルザス地方のPézenas/ペズナの教会のオルガニストを1851年から1866年に短い生涯を終えるまで努めており、その作品が弟の Jean Joseph Schluty(1829-1920) が1828年に寄稿した作品の中に1曲引用されています。Édouard Schluty はこの第24巻を見る限り美しい作品を生み出せる霊感に恵まれた作曲家に思え、弟がその早すぎる死を悼んで1曲引用した・・・というのはいかにもありそうに思えます。



このキンボール社のリードオルガンは1900年前後に北米で隆盛を極めていた豪華棚付きリードオルガンの生き残り。小学校低学年の授業で使われていた程度の楽器、というリードオルガンのイメージとは全く異なる堂々たる楽器です。管楽器や歌唱のイメージは「レガート」という表現に取り組む上で必要不可欠。リードオルガンは管楽器かつ持続音を得意とする楽器で、しかも空気を足踏みペダルで送るのですから工夫次第で強弱表現が可能、というかなり楽しい楽器です。素直で温かくしかも演奏者の悪知恵w次第で管楽器としての多種多彩な表現ができる魅力は、一部の世界だけに留めさせるにはあまりにも惜しい世界です。

2023年12月20日 (水)

Joseph Edward Newell (1843-c1936)『The Vesper Voluntaries Book 27』から第10曲『Verset』を、日本樂器 第七號 1905(明治38)年製リードオルガンで

日本樂器 第七號 1905(明治38)年製リードオルガンで、Joseph Edward Newell (1843-c.1936) による『The Vesper Voluntaries, Book 27』の第10曲「Verset」を弾きました。

才気堂、 渡邉祐治さんの塗装を含めた完全修復足踏みオルガンですぞ(*´-`)
ヤマハもカワイもピアノの製造ではなく足踏みオルガンの製造から始まっています。この足踏みオルガンは現代のヤマハである日本樂器1905(明治38)年製造、ヤマハ初のピアノを1900年に作ってようやく5年経ったぐらいのタイミングの楽器ですよ〜。

・お問合せ→リードオルガン修復:才気堂、渡邉祐治
https://pianoreedorgan.jimdofree.com/

J.E.Newell という作曲家の名前は手鍵盤のためのオルガン曲集にはかなりの頻度で登場しますが、非常に情報が少なく往生します(没年が怪しいというのが象徴的な気もします)。この時代は世の中に存在する音のうち蓄音機以外のほぼ全てが生音であり、生楽器の需要は現代とは考えられないほど多かったのでした。ということは、この時代は Newell のような「普通の」音楽家がそれこそそこら中で活躍していた時代で、機械に人間が使い倒されるばかりの現代とは違って人それぞれが個性的な能力に応じて幅広く活躍できた時代だったんですね〜 (*´-`)


2023年11月18日 (土)

Flavell(1856-c.1919)「The Vesper Voluntaries for the Organ, Harmonium, or American Organ」から、第1曲『Romance』を、1900年ごろカナダはベル社の豪華棚付きリードオルガンで

1900年前後の欧米では足踏み送風式オルガンのための曲集がそれこそ星の数ほどシリーズとして出版されておりました。そのうちの一つ「The Vesper Voluntaries for the Organ, Harmonium, or American Organ」シリーズの Book 25 の作曲は Edwin Mark Flavell (1856-c.1919) なる人物で、ロンドンのテムズ川沿いのワンズワース(Wandsworth)でピアニストそして指揮者として活躍しており、手鍵盤のみのオルガン曲集をいくつか出版しています。

このリードオルガンはわたらせ渓谷鐵道の神戸(ごうど)駅から2km程度、群馬県みどり市「童謡ふるさと館」所蔵のカナダはベル社の1900年ころの豪華棚付きリードオルガン(17ストップ!)で、この頃に北米で隆盛を極めていた豪華棚付きリードオルガンの生き残り。リードオルガンなんて小学校低学年の授業で使われていた程度の楽器、というイメージとは全く異なる堂々たる楽器です。

この手の大型棚つきリードオルガンは100年ちょい昔の北米にはごくごく普通にあった楽器でして、見た目はパイプオルガンに匹敵するくらいに派手ですが、実は普通の箱型のリードオルガンの上に豪華な装飾棚(しかも意外と軽いw)を載せているだけなので構造や機能自体は普通のリードオルガンとおおむね一緒と考えて差し支えないのでした。見た目で身構える必要は全〜然ないんですよ〜(・o・ゞ

2023年11月 8日 (水)

八ヶ岳リードオルガン美術館所蔵、エステイ社1887年製のリードオルガンで「Le trésor des chapelles」第10巻から「Élévation ou Communion」を

「八ヶ岳リードオルガン美術館」所蔵のアメリカはエステイ社の名器、1887年製のリードオルガン(13ストップ)を使わせていただきました。「八ヶ岳リードオルガン美術館」は小海線の甲斐小泉駅からワリと急な坂道を20分ほど登った別荘地の一角にある瀟洒な建物で、所狭しとリードオルガンやらハルモニウムやらが並んでいて試奏もできる素敵な場所です。ココはけっこう前から気になっていたのですが、コレほど大切な場所をなんとなく後回しにしていた自分ってばほんっっっと見る目がないなぁ💦

「Le trésor des chapelles」は1864〜1865年になんと30冊も刊行された、小さめのオルガンまたはハルモニウムのための曲集です。当時、教会が増えてオルガン奏楽者の需要が高まっていたにも関わらずそのために必要な安価で難しくない曲集はまだまだ足りていなかったようで、それを解消するべく一挙に30冊もの作品集を刊行した見識、素晴らしいと思います。30冊全てが作曲家でありオルガニストでもある作者の手による作品集で、実用的にも文句なかったことでしょう。

第10巻は Ignace Xavier Joseph Leybach(1817-1891) による、op.57の曲集です。レイバックはオルガニストとしての訓練を受けた後、パリでカルクブレンナーそしてショパンの弟子となりました。レイバックは当時有名なピアニストであると同時にオルガニストでもあり、1844年からやトゥールーズの Saint-Étienne大聖堂のオルガニストを務めてその地で亡くなっています。この動画の「Élévation ou Communion」は、op.57の第2曲め、非常に柔らかく美しい部分の間にオペラ的な部分が織り込まれているという作品です。



このエステイ社のリードオルガンは1900年前後に北米で隆盛を極めていた豪華棚付きリードオルガンの生き残り。小学校低学年の授業で使われていた程度の楽器、というリードオルガンのイメージとは全く異なる堂々たる楽器です。管楽器や歌唱のイメージは「レガート」という表現に取り組む上で必要不可欠。リードオルガンは管楽器かつ持続音を得意とする楽器で、しかも空気を足踏みペダルで送るのですから工夫次第で強弱表現が可能、というかなり楽しい楽器です。素直で温かくしかも演奏者の悪知恵w次第で管楽器としての多種多彩な表現ができる魅力は、一部の世界だけに留めさせるにはあまりにも惜しい世界です。

2023年9月12日 (火)

八ヶ岳リードオルガン美術館所蔵、キンボール社1900年代初頭製らしき豪華棚付きリードオルガンで「Le trésor des chapelles」第24巻『Morceaux religieux, op.25』から、第2曲「Offertoire」を

8月末に「八ヶ岳リードオルガン美術館」所蔵のアメリカはキンボール社の名器、おそらく20世紀初頭に作られた豪華棚付きリードオルガン(9ストップ)を使わせていただきました。「八ヶ岳リードオルガン美術館」は小海線の甲斐小泉駅からワリと急な坂道を20分ほど登った別荘地の一角にある瀟洒な建物で、所狭しとリードオルガンやらハルモニウムやらが並んでいて試奏もできる素敵な場所です。ココはけっこう前から気になっていたのですが、コレほど大切な場所をなんとなく後回しにしていた自分ってばほんっっっと見る目がないなぁ💦

Le trésor des chapelles」は1864〜1865年になんと30冊も刊行された、小さめのオルガンまたはハルモニウムのための曲集です。当時、教会が増えてオルガン奏楽者の需要が高まっていたにも関わらずそのために必要な安価で難しくない曲集はまだまだ足りていなかったようで、それを解消するべく一挙に30冊もの作品集を刊行した見識、素晴らしいと思います。30冊全てが作曲家でありオルガニストでもある作者の手による作品集で、実用的にも文句なかったことでしょう。

Le trésor des chapelles」の第24巻は Édouard Schluty(1826-1866) なる作曲者による曲集で Morceaux religieux, op.25 と題されていおり、この動画はその二曲目の Offertoire です。Édouard Schluty は、フランス南部アルザス地方のPézenas/ペズナの教会のオルガニストを1851年から1866年に短い生涯を終えるまで努めており、その作品が弟の Jean Joseph Schluty(1829-1920) が1828年に寄稿した作品の中に1曲引用されています。Édouard Schluty はこの第24巻を見る限り美しい作品を生み出せる霊感に恵まれた作曲家に思え、弟がその早すぎる死を悼んで1曲引用した・・・というのはいかにもありそうに思えます。



このキンボール社のリードオルガンは1900年前後に北米で隆盛を極めていた豪華棚付きリードオルガンの生き残り。小学校低学年の授業で使われていた程度の楽器、というリードオルガンのイメージとは全く異なる堂々たる楽器です。管楽器や歌唱のイメージは「レガート」という表現に取り組む上で必要不可欠。リードオルガンは管楽器かつ持続音を得意とする楽器で、しかも空気を足踏みペダルで送るのですから工夫次第で強弱表現が可能、というかなり楽しい楽器です。素直で温かくしかも演奏者の悪知恵w次第で管楽器としての多種多彩な表現ができる魅力は、一部の世界だけに留めさせるにはあまりにも惜しい世界です。

2023年8月20日 (日)

フラヴェル「The Vesper Voluntaries, Book 25」から、第5曲『Alla breve』を、1893年頃 Chicago Cottage Organ 製大型リードオルガンで

1900年前後の欧米では足踏み送風式オルガンのための曲集がそれこそ星の数ほどシリーズとして出版されておりました。そのうちの一つ「The Vesper Voluntaries for the Organ, Harmonium, or American Organ」シリーズの Book 25 の作曲は Edwin Mark Flavell (c.1860-c.1919) なる人物で、ロンドンのテムズ川沿いのワンズワース(Wandsworth)でピアニストそして指揮者として活躍しており、手鍵盤のみのオルガン曲集をいくつか出版しています。

この足踏みオルガンは、シカゴ・コテージ・オルガン社が1893年ごろに作った大型棚つきリードオルガンです。この手の大型棚つきリードオルガンは100年ちょい昔の北米にはごくごく普通にあった楽器です。見た目はパイプオルガンに匹敵するくらいに派手ですが、実は普通の箱型のリードオルガンの上に豪華な装飾棚(しかも意外と軽いw)を載せているだけなので、構造や機能自体は普通のリードオルガンとおおむね一緒と考えて差し支えないのでした。見た目で身構える必要は全〜然ないんですよ〜(・o・ゞ

・リードオルガン修復:渡邉祐治
https://pianoreedorgan.jimdofree.com/

2023年8月11日 (金)

八ヶ岳リードオルガン美術館所蔵、エステイ社1887年製のリードオルガンで「Le trésor des chapelles」第1巻から「Communion」を

「八ヶ岳リードオルガン美術館」所蔵のアメリカはエステイ社の名器、1887年製の豪華棚付きリードオルガン(13ストップ)を使わせていただきました。八ヶ岳リードオルガン美術館」は小海線の甲斐小泉駅からワリと急な坂道を20分ほど登った別荘地の一角にある瀟洒な建物で、所狭しとリードオルガンやらハルモニウムやらが並んでいて試奏もできる素敵な場所です。ココはけっこう前から気になっていたのですが、コレほど大切な場所をなんとなく後回しにしていた自分ってばほんっっっと見る目がないなぁ💦

Le trésor des chapelles」は1864〜1865年になんと30冊も刊行された、小さめのオルガンまたはハルモニウムのための曲集です。当時、教会が増えてオルガン奏楽者の需要が高まっていたにも関わらずそのために必要な安価で難しくない曲集はまだまだ足りていなかったようで、それを解消するべく一挙に30冊もの作品集を刊行した見識、素晴らしいと思います。30冊全てが作曲家でありオルガニストでもある作者の手による作品集で、実用的にも文句なかったことでしょう。

第1巻は Frère Léonce なる作曲者名が印刷されていますが例によってwロクに情報がなく、どうやら本名 Gérard-Augustin Giscaro なる人物であろう、という記述がネット上に見つけられたにすぎません。この第1巻はまぁ当然でしょうがハンパなくリキが入っていて、非常〜に充実した10曲が収められています。この動画の「Communion」は第2曲め、美しい中に華やかなオペラ的な走句が織り込まれているという意欲的な作品だと思います (`・ω・´)



このエステイ社のリードオルガンは1900年前後に北米で隆盛を極めていた豪華棚付きリードオルガンの生き残り。小学校低学年の授業で使われていた程度の楽器、というリードオルガンのイメージとは全く異なる堂々たる楽器です。管楽器や歌唱のイメージは「レガート」という表現に取り組む上で必要不可欠。リードオルガンは管楽器かつ持続音を得意とする楽器で、しかも空気を足踏みペダルで送るのですから工夫次第で強弱表現が可能、というかなり楽しい楽器です。素直で温かくしかも演奏者の悪知恵w次第で管楽器としての多種多彩な表現ができる魅力は、一部の世界だけに留めさせるにはあまりにも惜しい世界です。

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