フォト

カテゴリー

カテゴリー「音楽>ピアノなど鍵盤楽器の歴史」の135件の記事

2025年4月18日 (金)

ピアピットでオーバーホールした1902年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)で、シューベルトの即興曲 D935-2 を

いつものピアピットでがっつりオーバーホールした 1902年製 ウィーン式アクションのBösendorfer 167cm で弾いた、シューベルト(1797-1828) の即興曲遺作第2番、D935-2 です。な〜んとなんとこの個体はワタクシ所有の1894年製(中島みゆきばかり弾いてますがw)と全く同型なのが僥倖でござるよ✨✨✨

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

輸入する際に白鍵の象牙が剥がされてしまうのはもはや仕方のないこと。全体的な動作自体は良好でハンマーフェルト外側に巻いてある革も良い状態で残っていたのでそれもオリジナルのまま活かし、可能な限りオリジナルを残す方向でオーバーホールを行っています💪

外側に革が巻いてありますからフェルトに針を刺して行う整音はその革を剥がさなければ不可能ですが、革の状態が良く音質もいかにも独特な美しい音色が残っていたのでそのまま整音せずに温存しています。絃はポレロ製をおごって消耗部品を交換するもむやみに交換はしなかった結果でしょうか、オリジナルのままの発音が明瞭かつ伸びのある音色がよみがえり、それに加えて華やかな音色に仕上がった印象です。たくさん弾いて革が固くつぶれて音質が硬く伸びなくなるまではこのままでイケますね〜。

シューベルトが活躍していた1820年代のウィーン式6オクターヴの楽器と基本的な方向性は全く変わっておらず、いわゆる「ウィンナトーン」という概念は不変だったのだろうなと思わされます。やはりウィーンは超〜保守的だったんでしょうね。



*1820年ごろのウィーン式6オクターヴで同じ曲をどうぞ

2025年1月 2日 (木)

DIAPASON No.132 1972年製 で、ルドルフ・ディットリヒの日本楽譜 第1巻「6つの日本民謡」から、第3曲『櫻』を

Nippon-gakufu1s

DIAPASON(ディアパソン)の1972年製 No.132 で、ルドルフ・ディットリヒの日本楽譜 第1巻「6つの日本民謡」から、第3曲『櫻』を弾きました。例によってのピアピットのオーバーホール&カスタム塗装ですぜ(*´-`)

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

DIAPASON(ディアパソン)はよく知られた国産ピアノで、天才技術者の誉れ高い大橋幡岩氏の高い志を実現すべく製造されたのが始まりです。この動画の楽器は1972年製ですので浜楽商事が販売していた時代の製品で、この個体は象牙黒檀鍵盤かつ総アグラフで大橋幡岩氏の思想が色濃く受け継がれているかのような逸品。カスタム塗装で雰囲気一新しましたがこの感じは映像ではチト伝わりづらいので、実物を見ていただきたいですね〜(*´-`)

Soukyokusyuu1888s
1990234_0000

ルドルフ・ディットリヒはオーストリア出身、1888〜1894年に東京音楽学校(現:東京藝術大学)で教えていたいわゆる「お雇い外国人」最後期の一人で、日本の西洋音楽史上において極めて重要な錚々たる音楽家を教えています。ディットリヒは日本の音楽に興味を持ち、帰国後、楽譜を数冊出版しています。

ディットリヒが来日したちょうどそのタイミングの1888(明治21)年に音楽取調掛が箏曲を五線譜で表現する初の試みとして『箏曲集』を刊行しており、現物は国立公文書館の「内閣文庫」コレクションに所蔵されています。その中の第2曲が『櫻 Sakura』で、それをディットリヒがピアノ用に編曲したとされています(・o・ゞ

2024年11月10日 (日)

1726年製クリストーフォリピアノ&1763年製モーツァルトの旅行用クラヴィコード演奏会

2024年11月10日、大阪は堺の『スペースクリストーフォリ堺』主催公演の大役を仰せつかりましてな💪

Img_5896s

現代的な合理化を一切廃して多少の弾きづらさなどなどは意に関せず、といういさぎよ過ぎるほどの完全オリジナル主義な修復方針にこだわり抜く山本宣夫氏の本拠が『スペースクリストーフォリ堺』、山本宣夫氏はココで25年前の1999年に1726年製クリストーフォリピアノの奇跡的な完全複製楽器を作り上げたのでした(なお、浜松市楽器博物館の有名なのとは別の個体です👌)。この奇跡の一部がこの記事↓です。

*山本宣夫氏のインタビュー
 ホンモノの熱意というのは神がかりのように運を引き寄せるのだと納得させられます。運も実力のうち!
https://phoenixhall.jp/interview/2004/06/01/747/

20241110_cristofori_s

20年前まではこの山本宣夫氏の1726年製クリストーフォリピアノでの活動をワリと頑張っていたワタクシ、昨年2023年豊中市での「とよなかクリエイティブ・ガーデン」でのひさびさの再会を機に加齢なw復活、月並みな表現ですが、過ぎ去りし青春時代に一瞬でタイムスリップしましたよ〜😭

20241110_palazzi_s

「最初のピアノはチェンバロの躯体に弦を叩く機構を取り付けただけの不完全なシロモノだった」と憶測するだけなら知識があろうがなかろうが容易ですが、いまだにピアノの専門家な方々ですら案外とこの程度の認識でとどまっているコトが少なからずなようで歯がゆいです。例によってと言うべきかw史実は全く異なっており、Cristofori のピアノはチェンバロよりはるかに複雑強靭に組まれていて、しかもこの1726年製の個体の打弦機構(アクション)はウナるしかないほどに洗練されています。

*打弦機構の動画をどうぞ〜✨✨✨


そして、これまた特殊な「ダブル・ベントサイド構造」のために複雑強靭な躯体を持ちながら響板は雑な表現を許してもらえれば柔らかく「浮いた」ように仕組まれており、Cristofori のピアノで弾く柔らかいピアニシモは特筆すべき美しさなのです。そのためCristofori のピアノとクラヴィコードとの親和性が極めて高く、比較的小規模な会場でこの2台を演奏するというのは我がスタイルとして確立できたような気がいたします✌️

20241110_reiseclavichord_s

この山本宣夫氏による複製楽器は「未完成かつ不完全なシロモノ」という根拠のない憶測を吹っ飛ばすに足る驚くべき出来栄えで、やはりピアノという楽器は Cristofori という「真の天才による偉大な発明」だったのだろうなぁと思わされます。願わくば、この動画でその魔力のごく一部でも伝われば幸いです。

2024年10月20日 (日)

「エレピアン」新発売の新聞広告

先日カタログ類を多数救出した鶴見の「大塚ピアノ社」の大量の資料の中に日本コロムビアが発売した「エレピアン」のカタログ類がございまして、その一冊に1962年11月6日朝日夕刊、エレピアン新発売の広告が挟まっておりましたぞ😳

19621106bws

挟まっていた元のカタログはコレで、コレまた古いものでした。掲載機種は以下の通りです。
*CEP-612D<61鍵>
 真空管2本、トランジスタ3個、ダイオード2個
*CEP-615<61鍵>
 真空管2本、トランジスタ3個、ダイオード2個
*CEP-753F<75鍵>
 真空管5本、トランジスタ2個、ダイオード2個
*CEP-753<75鍵>
 真空管5本、トランジスタ2個、ダイオード2個

Img_5714s

2024年7月19日 (金)

1950年ごろ製造 ALEXANDER HERRMANN/アレキサンダー ヘルマンで、カリンニコフの『悲しき歌』を

戦後おそらく1950年前後と思われる アレキサンダー ヘルマン(福山ピアノ社、Material Made in Germany)で、カリンニコフの『悲しき歌』を弾きました。

ALEXANDER HERRMANN/アレキサンダー ヘルマンは20世紀初頭創業のドイツは Sangerhausen(ザンガーハウゼン、旧東ドイツ地域)のメーカーですが、この個体は銘板に「Material Made in Germany」と明記されていまして、実は日本の福山ピアノ社がドイツの本家から部品を輸入して日本で製作していたブランドのようです。まぁこの銘板そのものは英語表記でかつ動詞の「made」まで大文字始まりの「Made」になっているので、日本の職人お得意のコピー技術で本家をマネた可能性大と思いますけどね〜w

フツーに考えればこれはいわゆる「ニセモノ」とか「パチモン」とかで終わってしまいそうなシロモノですが、ちょ〜っと待っていただきたい。少なくともこの個体は曲を弾いた際の余韻がおよそ日本のピアノ製作伝統からかけ離れているとさえ思わせられるような繊細さを持ち合わせていてビックリ、福山ピアノ社が直接指導を受けたうえでその通り真面目に製作していた可能性すら想像できそうな素晴らしさでした😳

動画内にも載せましたが、この福山ピアノ社カタログの ALEXANDER HERRMANN の項に<独逸最堅牢アレキサンダーヘルマンスケールにより製作せる最高級品><独逸ローイスレンナー会社へ特別注文せる世界的内部弊社直輸入製作品>という表現があり、また福山ピアノ社は1946年に国際水準到達を目標に10年計画を立ててブリュートナーの徹底的な研究・分析に着手したとのことで、あながち伊達や酔狂による誇大広告でもなさそうに思えます(同時に誇大広告華やかなりし時代でもあるので、ナンとも判断しづらいのもホンネw)

Img_4015s
*資料提供:三浦啓市

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

基礎文献:三浦啓市『日本のピアノメーカーとブランド』
https://www.ankasha.com/books/books2

Vasily Kalinnikov(1866−1901)はロシアの薄命の作曲家です。モスクワ音楽院に入学するも学費が払えず退学、さらにチャイコフスキーに認められるも結核のため南部への転地療養を余儀なくさせられて35歳を目前にして亡くなる・・・というのはなかなかに悲劇的な人生であります。この『悲しき歌』はいかにもロシア民謡な雰囲気を濃厚に備えた佳作ですぞ✨

2024年3月20日 (水)

いわきアリオス鍵盤楽器弾き込み隊

Img_2758

年に数回お声がかかる、いわきアリオスの各種鍵盤楽器弾き込み隊なおしごと。

*16フィートチェンバロの音はこちらからどうぞ〜


かなり珍しい16フィート弦を備えたヒストリカル工法による2段鍵盤のジャーマンチェンバロやら1段鍵盤のジャーマンチェンバロ、そしてポジティフオルガンにクラヴィコードと弾き放題なのが愉しくて。

Img_2749

それにもまして(おっとw)楽しみなのが恒例の豪華海鮮丼ランチ、今回は海鮮丼&魚唐揚げセットで見事なヒラメの唐揚げ。骨離れは良いわ、しっかり揚げられていて小骨を気にせずにパリパリ食えるわで満足満足😋

Img_2753

2024年3月 2日 (土)

リントホルムのベントサイドスピネットで、『フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブック』から「La Volta」を

ドイツのLINDHOLM(リントホルム)製ベントサイドスピネットがピアピットに登場ですぞ。古楽器も製作するわパイプオルガンも弾いてしまうわな調律師の嶋田ひろみさんが、またまた例によっての印西市のピアピットで紹介している楽器です。機種はちょこちょこ入れ替わったりなくなったりします💦ので、ご覧になりたい方はピアピットまでご連絡くださいましね〜(*´-`)

LINDHOLMのスピネットは半世紀ほど前にはドイツで相〜当に流行っていたそうで、それこそ「そこらじゅうで見かける」ほどだった由。それを真似て作ったのがかのTOKAIのスピネットだったそうです。この個体も、オリジナルの独自な一体型の爪周りを現代一般的なチェンバロの構造に換装してばっちりオーバーホールしてあります。

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

・『フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブック』から、
 William Byrd(ca.1540-1623)作曲 『La Volta』
『フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブック』は J.S.バッハ(1685-1750)より100年ほど昔にイギリスで出版されていた鍵盤楽器用の曲集で、親しみやすい曲も少なからずなんですよ〜😉



・トーカイ製ベントサイドスピネットの動画はこちら(^^)

2023年12月12日 (火)

クリストフォリ1726年製ピアノの複製楽器による演奏動画/ジュスティーニ:「強弱がつく所謂ハンマー付チェンバロのためのソナタ集, op.1」から、ソナタ第3

大阪は堺の山本宣夫(やまもとのぶお)氏の制作による Cristofori 1726年製 ピアノの動画第3弾ですぜ😎

この Cristofori のピアノのために作曲・出版された最初の曲集として限られた範囲で有名wwwなのが、Lodovico Giustini(1685-1743) が Cristofori が亡くなった翌年の1732年にフィレンツェで出版したこのソナタ集です。題して
Sonate da cimbalo di piano e forte detto volgarmente di martelletti, op.1」でして、だいたいの感じで「強弱がつく所謂ハンマー付チェンバロのためのソナタ集, op.1」という邦題とできようかと思います。その中からソナタ第3番へ長調でございます。

Cristofori の1726年製の個体は鍵盤1つあたり弦が2本ずつ張られており、これすなはち due corde(=2本の弦)です。この個体では鍵盤全体を手で左にズラすことで1本だけの弦を叩くことができ、これすなはちホンモノの una corda(=1本の弦)です。この動画では第3楽章のみ una corda で弾いており、楽章間で切り替える様子が観察できるようにしましたよ〜😉

「最初のピアノはチェンバロの躯体に弦を叩く機構を取り付けただけの不完全なシロモノだった」と憶測するだけなら知識があろうがなかろうが容易ですが、いまだにピアノの専門家な方々ですら案外とこの程度の認識でとどまっているコトが少なからずなようで歯がゆいです。例によってと言うべきかw史実は全く異なっており、Cristofori のピアノはチェンバロよりはるかに複雑強靭に組まれていて、しかもこの1726年製の個体の打弦機構(アクション)はウナるしかないほどに洗練されています。

*打弦機構の動画をどうぞ〜✨✨✨


実は後年 Gottfried Silbermann(1683-1753) がピアノを作ったときも結局はこの1726年版のアクションの寸法はおろか形状までもまるっきりコピーを搭載していることが判っていまして、この形態が Cristofori のピアノアクションの完成形だった可能性が高い・・・ということは頭の外側wにでも留めてくださると嬉しいです。この1726年版のアクションは、1700年代初期にヨーロッパで複数現れていたピアノ誕生の萌芽の中でも圧倒的に抜きん出ています。

この山本宣夫氏による複製楽器は「未完成かつ不完全なシロモノ」という根拠のない憶測を吹っ飛ばすに足る驚くべき出来栄えで、やはりピアノという楽器は Cristofori という「真の天才による偉大な発明」だったのだろうなぁと思わされます。願わくば、この動画でその魔力のごく一部でも伝われば幸いです。

2023年11月26日 (日)

クリストフォリ1726年製ピアノの複製楽器による演奏動画/ガルッピ:ソナタ ハ短調 から、第1楽章

ピアノの発明者とされる Bartolomeo Cristofori(1655-1731) によるピアノのオリジナルは3台現存しており、そのうちライプツィヒ大学所蔵の1726年製の楽器を基にした精密な複製楽器を大阪は堺の山本宣夫(やまもとのぶお)氏が制作したのは1999年のこと。実はその楽器のデモ音源を弾いてCDを焼いてごくごく限られた範囲でウケていたwのが他ならぬワタクシなのですが、それからほぼ四半世紀経って再び収録する機会に恵まれました😍
(なお、浜松市楽器博物館の有名なのとは別の個体です👌)

*山本宣夫氏のインタビュー
 ホンモノの熱意というのは神がかりのように運を引き寄せるのだと納得させられます。運も実力のうち!
https://phoenixhall.jp/interview/2004/06/01/747/

Cristofori の1726年製の個体は鍵盤1つあたり弦が2本ずつ張られており、これすなはち due corde(=2本の弦)です。この個体では鍵盤全体を手で左にズラすことで1本だけの弦を叩くことができ、これすなはちホンモノの una corda(=1本の弦)です。この動画では Cristofori. による una corda の素晴らしく dolce な雰囲気を味わってくださいませ〜😉

Galuppi のソナタはミケランジェリが現代ピアノを弾いた素晴らしい録音がございますが、この時代の特にイタリアの鍵盤楽曲はこれほどの名手が弾かないとなかなか「それっぽく」ならないです。現代のピアノで弾くとどうしても大げさな雰囲気になりやすく、大げさにならないように注意したところでただ弱いだけの演奏に。そしてチェンバロで弾くと、現代ピアノを知っている我々にとって満足できるような細かな強弱表現が難しいためにどうしても物足りない印象になってしまいます💦 なんとなくの印象に過ぎませんが、この時代、ピアノというまだ見ぬ楽器をあたかも念頭に置いているかのような方向に音楽が変わり始める兆しがあり、ガルッピの鍵盤楽曲はまさにこの時代ど真ん中の中途半端とも評価されてしまいそうな存在であり気がしてなりません。そのような音楽を Cristofori のフォルテピアノで弾くと、その独特な魅力が「腑に落ちる」感覚があります。

「最初のピアノはチェンバロの躯体に弦を叩く機構を取り付けただけの不完全なシロモノだった」と憶測するだけなら知識があろうがなかろうが容易ですが、いまだにピアノの専門家な方々ですら案外とこの程度の認識でとどまっているコトが少なからずなようで歯がゆいです。例によってと言うべきかw史実は全く異なっており、Cristofori のピアノはチェンバロよりはるかに複雑強靭に組まれていて、しかもこの1726年製の個体の打弦機構(アクション)はウナるしかないほどに洗練されています。

*打弦機構の動画をどうぞ〜✨✨✨


実は後年 Gottfried Silbermann(1683-1753) がピアノを作ったときも結局はこの1726年版のアクションの寸法はおろか形状までもまるっきりコピーを搭載していることが判っていまして、この形態が Cristofori のピアノアクションの完成形だった可能性が高い・・・ということは頭の外側wにでも留めてくださると嬉しいです。この1726年版のアクションは、1700年代初期にヨーロッパで複数現れていたピアノ誕生の萌芽の中でも圧倒的に抜きん出ています。

この山本宣夫氏による複製楽器は「未完成かつ不完全なシロモノ」という根拠のない憶測を吹っ飛ばすに足る驚くべき出来栄えで、やはりピアノという楽器は Cristofori という「真の天才による偉大な発明」だったのだろうなぁと思わされます。願わくば、この動画でその魔力が少しでも伝われば幸いです。

2023年11月23日 (木)

クリストフォリ1726年製ピアノの複製楽器による演奏動画/ベネデット・マルチェルロ:ソナタ へ長調 S.724a から、第3楽章

ピアノの発明者とされる Bartolomeo Cristofori(1655-1731) によるピアノのオリジナルは3台現存しており、そのうちライプツィヒ大学所蔵の1726年製の楽器を基にした精密な複製楽器を大阪は堺の山本宣夫(やまもとのぶお)氏が制作したのは1999年のこと。実はその楽器のデモ音源を弾いてCDを焼いてごくごく限られた範囲でウケていたwのが他ならぬワタクシなのですが、それからほぼ四半世紀経って再び収録する機会に恵まれました😍
(なお、浜松市楽器博物館の有名なのとは別の個体です👌)

*山本宣夫氏のインタビュー
 ホンモノの熱意というのは神がかりのように運を引き寄せるのだと納得させられます。運も実力のうち!
https://phoenixhall.jp/interview/2004/06/01/747/

この3台現存している Cristofori のピアノのうち、ローマ博物館所蔵の1722年製のピアノを最初に入手したのが誰あろう、この Benedetto Marcello(1686-1739) です。このへ長調のソナタは、op.3として出版されたであろう曲集に入っていたと資料から推測されている曲です(この曲集の出版譜は残っていないので全てが推測👌)。なお、op.2が1712年出版でop.4が1717年出版ですからop.3の出版年はまぁ確実にその間、というコトは Cristofori のピアノを入手する前の出版でチト残念だったり💦

「最初のピアノはチェンバロの躯体に弦を叩く機構を取り付けただけの不完全なシロモノだった」と憶測するだけなら知識があろうがなかろうが容易ですが、いまだにピアノの専門家な方々ですら案外とこの程度の認識でとどまっているコトが少なからずなようで歯がゆいです。例によってと言うべきかw史実は全く異なっており、Cristofori のピアノはチェンバロよりはるかに複雑強靭に組まれていて、しかもこの1726年製の個体の打弦機構(アクション)はウナるしかないほどに洗練されています。

*打弦機構の動画をどうぞ〜✨✨✨


実は後年 Gottfried Silbermann(1683-1753) がピアノを作ったときも結局はこの1726年版のアクションの寸法はおろか形状までもまるっきりコピーを搭載していることが判っていまして、この形態が Cristofori のピアノアクションの完成形だった可能性が高い・・・ということは頭の外側wにでも留めてくださると嬉しいです。この1726年版のアクションは、1700年代初期にヨーロッパで複数現れていたピアノ誕生の萌芽の中でも圧倒的に抜きん出ています。

この山本宣夫氏による複製楽器は「未完成かつ不完全なシロモノ」という根拠のない憶測を吹っ飛ばすに足る驚くべき出来栄えで、やはりピアノという楽器は Cristofori という「真の天才による偉大な発明」だったのだろうなぁと思わされます。願わくば、この動画でその魔力が少しでも伝われば幸いです。

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

イベント・演奏会 グルメ・クッキング ファッション・アクセサリ レッスン 写真>Instagram 写真>昔のレンズ/カメラ 学問・資格 彫金 文化・芸術 旅行>アジア>フィリピン 旅行>アジア>中国 旅行>アジア>台湾 旅行>アジア>韓国 旅行>アジア>香港 旅行>ヨーロッパ 旅行>中南米 旅行>北米 旅行>北米>アメリカ 旅行>日本>中国地方 旅行>日本>中部地方 旅行>日本>九州地方 旅行>日本>北海道 旅行>日本>北陸地方 旅行>日本>四国 旅行>日本>山陰 旅行>日本>東北地方 旅行>日本>甲信越 旅行>日本>近畿地方 旅行>日本>関東地方 旅行・地域 日記・コラム・つぶやき 書籍・雑誌 萬年筆 鉄道 鉄道>写真 鉄道>模型 鉄道>模型>マヌ34 音楽 音楽>Soundcloud 音楽>YouTube 音楽>アンドレ・ギャニオン 音楽>オーディオ 音楽>クリストフォリピアノ 音楽>ピアノなど鍵盤楽器の歴史 音楽>ピアノ工房ピアピット 音楽>メーカー>ADLER Organ 音楽>メーカー>BECHSTEIN 音楽>メーカー>BELL Organ 音楽>メーカー>BELTON 音楽>メーカー>Blüthner 音楽>メーカー>Broadwood 音楽>メーカー>Bösendorfer 音楽>メーカー>Chicago Cottage Organ 音楽>メーカー>DIAPASON 音楽>メーカー>EASTEIN 音楽>メーカー>EHRBAR 音楽>メーカー>ENSCHU 音楽>メーカー>Farrand & Votey Organ 音楽>メーカー>FAZIOLI 音楽>メーカー>Grotrian 音楽>メーカー>Gröber 音楽>メーカー>HORUGEL 音楽>メーカー>KAWAI 音楽>メーカー>MATSUMOTO 音楽>メーカー>NISHIKAWA Organ 音楽>メーカー>Packard Organ 音楽>メーカー>PETROF 音楽>メーカー>Pleyel 音楽>メーカー>Steinway & Sons 音楽>メーカー>Streicher 音楽>メーカー>YAMAHA 音楽>中島みゆき 音楽>作曲家>Alberti 音楽>作曲家>Alkan 音楽>作曲家>Bach 音楽>作曲家>Battmann 音楽>作曲家>Beethoven 音楽>作曲家>Boëllmann 音楽>作曲家>Boëly 音楽>作曲家>Brahms 音楽>作曲家>Brambach 音楽>作曲家>Bruckner 音楽>作曲家>Burgmüller 音楽>作曲家>Buxtehude 音楽>作曲家>Böhm 音楽>作曲家>Cabezón 音楽>作曲家>Cage(1912-1992) 音楽>作曲家>Caplet 音楽>作曲家>Chaminade 音楽>作曲家>Chopin 音楽>作曲家>Clark 音楽>作曲家>Clementi 音楽>作曲家>Couperin 音楽>作曲家>Czerny 音楽>作曲家>Debussy 音楽>作曲家>Dubery(1948- ) 音楽>作曲家>Dvořák 音楽>作曲家>Fauré 音楽>作曲家>Fibich 音楽>作曲家>Field 音楽>作曲家>Fischer 音楽>作曲家>Flor Peeters(1903-1986) 音楽>作曲家>Franck 音楽>作曲家>Frescobaldi 音楽>作曲家>Froberger 音楽>作曲家>Gael 音楽>作曲家>Galuppi 音楽>作曲家>Giustini 音楽>作曲家>Godard 音楽>作曲家>Granados 音楽>作曲家>Grieg 音楽>作曲家>Hahn 音楽>作曲家>Haydn 音楽>作曲家>Hindemith 音楽>作曲家>Händel 音楽>作曲家>Janáček 音楽>作曲家>Lefébure-Wély 音楽>作曲家>Liszt 音楽>作曲家>MacDowell 音楽>作曲家>Marcello 音楽>作曲家>Massenet 音楽>作曲家>Mendelssohn 音楽>作曲家>Merikanto 音楽>作曲家>Moir 音楽>作曲家>Mompou 音楽>作曲家>Monti 音楽>作曲家>Mozart 音楽>作曲家>Pachelbel 音楽>作曲家>Ponce 音楽>作曲家>Reinecke 音楽>作曲家>Rinck 音楽>作曲家>Royer 音楽>作曲家>Rubinstein 音楽>作曲家>Satie 音楽>作曲家>Scarlatti 音楽>作曲家>Schubert 音楽>作曲家>Schumann 音楽>作曲家>Scriabin 音楽>作曲家>Sibelius 音楽>作曲家>Suk 音楽>作曲家>Séverac 音楽>作曲家>Tchaikovsky 音楽>作曲家>Wagner 音楽>作曲家>三島元樹 音楽>作曲家>中国人作曲家 音楽>作曲家>吉松隆 音楽>作曲家>大中寅二 音楽>作曲家>鷲見五郎 音楽>楽器>アップライトピアノ 音楽>楽器>クラヴィコード 音楽>楽器>スクエアピアノ 音楽>楽器>チェンバロ 音楽>楽器>フォルテピアノ 音楽>楽器>リードオルガン 音楽>楽器>特殊管楽器 音楽>楽器>鍵盤ハーモニカ 音楽>楽譜作成(lilypond) 音楽>蓄音器 音楽>高橋靖志ハープシコード&クラヴィコード 音楽に思うこと

2025年5月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のコメント

無料ブログはココログ