中島みゆき 作詞/作曲『あどけない話』ピアノソロ:1894年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)で
中島みゆきの『あどけない話』を、いつもの1894年製アンティークピアノで弾きました(*´-`)
『あどけない話』は、1991年10月15日~27日にBunkamuraシアターコクーンで行われた、オンシアター自由劇場創立25周年記念公演「ラブミーテンダー」のための書き下ろし曲です。その劇中で歌った吉田日出子のシングル《あどけない話/歌姫》が1992年に発売され、中島みゆき本人は1993年にリリースしたアルバム《時代─Time goes around─》に収録しています。
<おとぎばなしを聞かせるなら
「ありえないこと」と付け足しておいてよ
おとぎばなしはみんなずるい
どこにも日付を書いていない>
『あどけない話』というタイトルで<おとぎばなし>ですからまぁフツーは他愛もない夢物語的な『あどけない話』なのでしょうけれど、中島みゆきの歌詞で<ありえないこと>に加えて<おとぎばなしはみんなずるい>とぶっ込まれると俄然怪釈が変わってきますね〜。
<昨日のこと、あさってのこと、おとといのこと
それとも、いつ?>
主人公は想いびとから(コレは既定路線ねw)<おとぎばなし>=『あどけない話』=夢物語を聞かせられてそれが現実になることを期待=夢見ていますが、その話には<どこにも日付を書いていない>ワケで、現実になるのがいつなのか、はたまた現実にならないのか、確証が一切無いのでありま〜す。中島みゆきの歌詞にワリと登場する、「今のままで居続けたいし将来にも希望を持ちたいのに、未来に確証が持てないで不安になってしまう主人公」がここにも現れましたぞ👀
<船に乗り風に乗り
どこまでもどこまでも
私たち旅をゆく
信じてる、迷いもなく>
何やらことさらに未来をバラ色に(少し前に『バラ色の未来』も出しましたが👌)輝かせて、しかも最後にダメ押しで<信じてる、迷いもなく>ですから、これは主人公の未来に対する不安を打ち消したいがための姿勢だろうなぁと。人間というヤツらが本来的に100%誰もが未来に希望を抱くものなのかは知らんですが、この主人公のように未来に確証が持てなくなってしまうのは、期待していたのに裏切られた経験が少なくないからこそ、なのではないでしょうか💦
<おとぎばなしはみんなずるい
どこにも日付を書いていない>
ほ ら ね 。
人生なんつ〜のは、自分が望んでいるような良い未来はロクに起こらずに悪い未来ばかりが現実に起こりやがる、というモンですよね〜。かと言って・・・
<海鳴りよ 海鳴りよ
今日も また お前と 私が 残ったね>(『海鳴り』1978年)
永遠に変わらぬことを願いそのように行動したところで、逆にその結果変わらぬ自然現象である<海鳴り>と自分独り以外誰一人として残っていなくなったりもしますね。っっったく、な〜んでこうも人生は思い通りにならないんざんしょ😤
<「いつかおまえに見せてあげよう
沈まない月も翼のある花も」
終わることない夢のはなし
いつまでも私 うなずきましょう>
あくまでもあどけない空想の産物である<おとぎばなし>ですが、思い通りにならぬ人生に対してそれを積極的に肯定することなく「まぁそんなもんよね〜」とかなんとかうなずきながら生き続けるための方便としての意味、実は大変に大きいのだろうなぁと思わされます。現実逃避と申されるな(いやそうなんですがw)、よりどころがあらずして人生の荒波を泳ぎ切れる人物なんぞなかなかいるもんではございませぬ。<おとぎばなし>はオトナの先送りwとも思いますが、<いつまでも私 うなずきましょう>と人生をヤリ過ごすことができるならば、それはそれで名も知られぬ路傍の一介の石としてまことに立派な生き方でしょうぞ。
<双子のように似ているふたつ
誓うことと願うことは
うそじゃないうそじゃない
でも人は愛すると
叶おうが無理だろうが、夢を聞かせたくなるわ>
ふむ、出だしは倒置法ですな💡
<誓うことと願うことは 双子のように似ているふたつ>
思い通りにならぬ人生において、愛する方は誓って愛される方は願う、という図式を指摘しているのでしょうか。なるほどごもっともでございますが、な〜かなかに冷徹な観点ですな。愛する方が<夢を聞かせたくなる>のはまったくもってその通りで(特にオトコのコってばさw)、愛される方がたとえ<叶おうが無理だろうが>そうあってほしいと願ってうなずくこともまたその通りだろうなと思わされます。愛し愛される間柄は互いにあどけなく<おとぎばなし>を語り合うような関係で、人生のよりどころとして素晴らしく意味のある存在なのでしょう。嗚呼、それにしてもそれにしても、人生は邯鄲の夢のごとし💡
<終わることない夢のはなし
いつまでも私 うなずきましょう>
この動画で使っているピアノは100年以上昔、1894年製のアンティークピアノ。このような楽器を使ってこのような曲を弾くのはまことに愉しいです。現代では世間で聞こえる音のほとんどは電気を通していますが、このころに世間で聞こえていた音は生音が主流でした。1877年にエジソンが蓄音機を実用化し、このピアノが作られた1894年にはSPレコードの大量生産ができるようになって、次第に「録音」というシロモノが世間に知られるようになった時代。こんな時代の楽器がどれほど豊かな音世界を伝えていたのか、この動画で使っている楽器は奇跡的にオリジナルほぼそのまま、まさに時代の生き証人です。
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