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2024年2月の6件の記事

2024年2月29日 (木)

1960年代前半の BELTON/ベルトーン No.33 で、Théodpre Dubois(1837−1924)の『月の光/Clair de lune, op.82-1』を

1960年代前半の BELTON/ベルトーン No.33 で、デュボワ/Théodpre Dubois(1837−1924)の『月の光/Clair de lune, op.82-1』を弾きました。例によっての @ピアピット による丁〜寧〜な再調整です(*´-`)

ベルトーンを製造していた冨士楽器は戦前からの名門ですが、紆余曲折あって1955(昭和30)年に再編されています。このベルトーンという名称は芸大教授でピアニストであったレオニード・クロイツァー/Leonid Kreutzer(1884-1953)氏の発想によるもので、このピアノの鋳物フレームには誇らしげに<"BELTON" NAMED BY PROF. LEONID KREUTZER>と鋳込んであります。なお、BELTONという綴りから「ベルトン」と表記されることも少なくないですが、最後期に働いていた方から直接「ベルトーンだった」という証言が得られています。 #ピアノ工房 #ピアピット #再調整

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

デュボワは1896年からパリ音楽院院長を務めておりオルガンの世界ではそれなりの知名度はありますが、その他の世界ではほぼ顧みられない存在となってしまいました。『月の光/Clair de lune』と題されたピアノ曲は実はドビュッシーの専売特許ではなく、実はこの時代の何人もの作曲家に作曲されていたりするんですよ〜。この『月の光/Clair de lune』は1869年出版のヴェルレーヌ/Paul Verlaine(1844-1896)による詩集「艶やかなる宴(Fêtes galantes)」の冒頭の詩で、音楽作品と直接的に関連を裏づけるような証拠こそありませんが、まぁ関係しているだろうなと邪推してもそんなにおかしくないのではないでしょうか。(・o・ゞ

2024年2月23日 (金)

中島みゆき 作詞/作曲『異国』ピアノソロ:1894年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)で

中島みゆきの『異国』を、いつもの1894年製アンティークピアノで弾きました(*´-`)

本日2月23日は中島みゆきの生誕祭、特別な意味のありそうな曲ということで『異国』かなぁとヒラめいてしまったのが運の尽き、いやはや大〜変でございました😅

『異国』は1980年にリリースされたアルバム《生きていてもいいですか》の最後の曲で、この暗く暗すぎる真っ黒なアルバムを締めくくるにふさわしく(?)救いもナニも枯れ果てた絶望の縁を見下ろすがごとき存在です。LPレコードの片面はおおむね23分程度なのですが、そのうち9分もの長さをこの曲が占めるというところからしてナカナカ一筋縄では行かぬ曲。しかも基本的に伴奏がギターソロのみ、かつ、歌はボソボソつぶやくがごとき枯れ具合ですからおよそピアノで弾くにはふさわしくない曲だったりします。それが130年昔のベーゼンドルファーでどのように語らせられるか、いやまぁ、そりゃ原理的に無理筋なんですが、中島みゆき信者なみなさまの歌詞を補う能力に寄りかからせていただきましょうぞ💦

 とめられながらも去る町ならば
  ふるさとと呼ばせてもくれるだろう
  ふりきることを尊びながら
  旅を誘うまつりが聞こえる

  二度と来るなと唾を吐く町
  私がそこで生きてたことさえ
  覚えもないねと町が云うなら
  臨終の際にもそこは異国だ


ふるさと>の対語として<異国>を用いるこの切れ味鋭いセンス、たまらんですね。自分が居場所そして帰る場所を求めるからこそ旅に出るという姿(さすらい人ですね)が人生、というのはまぁ言い古されたネタでしょうが、同時に旅人とは本質的に他所ものであるというのもまた真実なのでしょう。

 遠いふるさとは 落ちぶれた男の名を
  呼んでなどいないのが ここからは見える
『あぶな坂』1976年)

中島みゆきのファーストアルバム《私の声が聞こえますか》(1976年)の口開けの曲の歌詞がコレですから、なかなかに<ふるさと>に対する問題意識は根が深そうですね〜。

 百年してもあたしは死ねない
  あたしを埋める場所などないから
  百億粒の灰になってもあたし
  帰り仕度をしつづける


これぞ魂の彷徨、自分の居場所そして帰る場所を求め続けるがゆえに安住の地が永遠に手に入らない、という内容を<あたしを埋める場所などない>と表現するのは絶っっっ品に暗黒であります。何かわからないものを求め続けて彷徨い続けるのが現代人、とは人生をテツガクし始めれば必ずぶち当たる意識で、コレまさに常に探し、常に切望し、常に渇いてしまう人々の苦悩。死が救いとならぬのであれば、いったいナニが救いとなるのでしょうか。

 悪口ひとつも自慢のように
  ふるさとの話はあたたかい
  忘れたふりを装いながらも
  靴をぬぐ場所があけてある ふるさと


どん底に暗い『異国』の歌詞でひときわ温かい救いの光を放っているのがこの一連で、個々人それぞれにとって「居場所」というナニやらよくわからないナニかがどれほどまでに大切かが痛切に感じさせられます。自分が社会の一員となっている、という実感が個々人にとって大きな精神的な支えとなるんですよね〜。

 しがみつくにも足さえみせない
  うらみつくにも袖さえみせない
  泣かれるいわれもないと云うなら
  あの世も地獄もあたしには 異国だ

  町はあたしを死んでも呼ばない
  あたしはふるさとの話に入れない
  くにはどこかときかれるたびに
  まだありませんと うつむく


人間は社会的動物であると述べたのはかのアリストテレス、いかに孤独を好む人物であっても社会から隔絶して生きることはおよそ不可能なワケで、それなのに社会に自分の居場所がないという精神的な孤独を強く感じてしまうと無力感はハンパなし。この限りない無力感を研ぎ澄ますとこんな表現になるんだなぁと思い、同時にこの一連で<異国>と<地獄>が語感上対を成していることに気づいて慄然とします。そして、以下の魂の彷徨を5回繰り返して曲が閉じられます。3回繰り返しは普通にありますが、4回ならず5回の繰り返しはにわかにはナニが起こったのかわからないくらいな異常な繰り返し回数で、常ならぬこの曲の締めくくりに相応しいのでは。

 百年してもあたしは死ねない
  あたしを埋める場所などないから
  百億粒の灰になってもあたし
  帰り仕度をしつづける




この動画で使っているピアノは100年以上昔、1894年製のアンティークピアノ。このような楽器を使ってこのような曲を弾くのはまことに愉しいです。現代では世間で聞こえる音のほとんどは電気を通していますが、このころに世間で聞こえていた音は生音が主流でした。1877年にエジソンが蓄音機を実用化し、このピアノが作られた1894年にはSPレコードの大量生産ができるようになって、次第に「録音」というシロモノが世間に知られるようになった時代。こんな時代の楽器がどれほど豊かな音世界を伝えていたのか、この動画で使っている楽器は奇跡的にオリジナルほぼそのまま、まさに時代の生き証人です。

2024年2月20日 (火)

リントホルムのベントサイドスピネットで、フィッシャー「音楽のパルナス山」第1組曲『Clio』から「サラバンド/Sarabande」を

現代では古楽器の研究が進んで一般的な理解も追いついてきて、ヒストリカルな工法による楽器を耳にすることがごくごく普通のこととなりましたが、ものの半世紀ほど昔のだいたい1960〜80年あたりはなかなかバリエーション豊かな時代でした。チェンバロは現代の楽器に比べると当然ながら「弱い」ワケでして、20世紀後半という時代には「商品」として通用しないと考えられたのでしょうか、ヒストリカルな雰囲気を持たせながらも強固な構造を持ったチェンバロも一定のシェアを確保していました。

このリントホルムの楽器もそのような存在の一つでして、国産の有名なTOKAIスピネットのコピー元だったりします。この手の楽器はかなり台数が生産されたようで残存数も案外と多く、実はピアノな方々がチェンバロの雰囲気を体験するために手軽な方向の一つなのではないかなぁというのがワタクシ筒井の私感でありま〜す。とは言え、肝心の弦をはじく爪の周辺は基本的に合成樹脂でしたから50年も経てばカスカスにwなってしまっており、およそマトモな動作は期待できない状態の個体がほとんどのようです。それを演奏に耐えるように復活させるためには、現代隆盛を極めているヒストリカル楽器の知見を援用して木製ジャックにデルリンの爪に交換、というのが弾く方にとってもメンテする方にとっても最も手っ取り早く確実な手段なんですね〜👌

この楽器は古楽器も製作するわパイプオルガンも弾いてしまうわな調律師の嶋田ひろみさんが、またまた例によっての印西市のピアピットで紹介している楽器です。機種はちょこちょこ入れ替わったりなくなったりします💦ので、ご覧になりたい方はピアピットまでご連絡くださいましね〜。

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

まぁこのような世界が「キワモノ扱い」されること自体は仕方ないこと。ですが、文化・芸術を醸成するにあたっては入り口の多様性ってか〜なり大切なハズでして、このような存在はついつい紹怪したくなってしまうのがワタクシでありま〜す。廻り道って、むっちゃオモシロいと思いませんこと?ヽ( ̄▽ ̄)ノ

2024年2月16日 (金)

APOLLO No.80 ミニピアノ 64鍵 で、エルガーのソナチネ 第1楽章を

例によっての ピアピット のピアノ、APOLLO No.80 ミニピアノ 64鍵で、エルガーのソナチネ 第1楽章を弾きました。APOLLOはワリとどこにでもあるようなごく普通のド中堅国産ピアノですがミニピアノを生産したという情報は見つけることができず、ベテラン調律師でも見たことがある人すらいないという謎の存在です。高さ104cm、幅112cm、奥行55cm程度で最低音1オクターヴが単弦、残りは複弦で3本弦はナシでした。

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

エルガーの『ソナチネ』はもともとエルガーの姪が8歳の時に練習曲として書かれた曲で、出版にあたってしっかりと変更が加えられています。愛情に満ちた素敵な曲で、耳にする機会が近年とみに増えたような気がしますね〜(・o・ゞ

2024年2月12日 (月)

Caleb Simper(1856-1942)「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」第2巻から第3曲『Offertoire』を、戦前1930年代前後の日本樂器 第八號 リードオルガンで

戦前1930年代前後製造、未修復の日本樂器 第八號 リードオルガンで、イギリスのオルガニストそして作曲家のカレブ・シンパー/Caleb Simper(1856-1942)の「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」シリーズの第2巻から、第3曲『Offertoire』を弾きました。

この楽器はあざみ野ガーデンズにほど近い、ガーデニング・エクステリアの『LEAD(リード)』の店舗内にストリートオルガンと言う位置づけで無料開放されている楽器です。なんでも社長のおばあさまだったかの蔵でこの楽器を見つけて、雰囲気も良くなりそうだし置いてみたのだとか。リードオルガン(=足踏みオルガン)は100万台を優に超えるくらいの台数作られたという説もあり、旧家の蔵から出てくるというのはリードオルガンあるあるだったりするんですよ〜😉

ただこの楽器は修復の手が全く入っていないので出ない音も数音で雑音も数音、足踏みペダルからは軋み雑音で演奏会の用途にはさすがに使えません。ただ置いてあって雰囲気を愉しむというストリートの楽器らしい存在ですが、LEADあざみ野の建物はなかなか素直な音がする場所でして、戦前の日本製の楽器独特の低音域の粘りのある充実感は充分に愉しめました。展示してある小物類も実にセンス良く、とっても心地よい空間でした。

・LEADあざみ野
https://yokohama-lead.net/

カレブ・シンパーは普通の愛好家にとって親しみやすく平易な作品を数多く作曲しており、それこそ何万冊の単位でむちゃくちゃに「売れて」いたんですね〜。この「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」シリーズだけでも12冊出版されておりまして、その第2巻の第3曲がこの『Offertoire』です。実はこの「17 Voluntaries for the Organ, American Organ or Harmonium」はオマケが入っているものが5冊もあるという、似たような雰囲気の曲もまぁ少なくはないにしても、多作家ってぇヤツはホントにスゴいんだなぁと思わされます。

2024年2月 2日 (金)

トーカイ製ベントサイドスピネットで、ヘンデル『組曲 ニ短調, HWV437』からサラバンドを

一世を風靡したトーカイ製ベントサイドスピネットで、ヘンデル『組曲 ニ短調, HWV437』からサラバンドです。
古楽器も作ってパイプオルガンも弾いてしまう調律師の嶋田ひろみさんからのトーカイ製ベントサイドスピネットがピアピットに登場ですぞ(*´-`)

ピアノな方々でチェンバロと言えば判で押したように J.S.バッハを弾くことが多いように見受けられますが、いやいやいや、J.S.バッハは基本的に複雑で大〜変です。ヘンデルを忘れてはなりませぬぞ〜😉

オリジナルの独自な一体型の爪周りを、現代一般的なチェンバロの構造に換装してばっちりオーバーホールしてあり、しっかりした鳴りになってます。

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

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