中島みゆき 作詞/作曲『地上の星』ピアノソロ:1894年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)
中島みゆきの『地上の星』を、いつもの1894年製アンティークピアノで弾きました(*´-`)
『地上の星』は2000年にリリースされたアルバム《短篇集》の斬り込み隊長にふさわしくめっっっちゃカッコ良い一曲です。このアルバム《短篇集》に先だって『地上の星』そして『ヘッドライト・テールライト』がNHK総合テレビ『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』の主題歌としてオンエアされ、2曲ともアルバム《短篇集》のみに収録される予定だったところ、ファンからの要望で急遽この2曲をシングル盤として発売したとのことです。
NHK総合テレビ『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』のプロデューサーが中島みゆきファンでもあり、『命の別名』(1998年)の<名もなき君にも 名もなき僕にも>というフレーズが無名の人々の活躍を取り上げる『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』の主旨と合致していたことから主題歌とエンディング曲を依頼した、という経緯がありまして。『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』の人気も手伝って『地上の星』は驚異的なロングヒットとなり、中島みゆきは2002年大晦日の「第53回NHK紅白歌合戦」にデビュー27年目にして初出場、その後の2003年1月20日付オリコン・シングルチャートで『地上の星』は発売後130週目にして第1位を獲得しました。
『地上の星』の歌詞は中島みゆきにしてはきはめて単純ですが、やはりさすがのテクニックが随所に光っていますぞ。
<風の中のすばる
砂の中の銀河>
<草原のペガサス
街角のヴィーナス>
<崖の上のジュピター
水底のシリウス>
<すばる>も<銀河>も本来は星の集合体として光り輝く存在なのに<風の中><砂の中>にかき消され埋もれる存在とされ、<ペガサス>も<ヴィーナス>も本来は神話の主人公として光り輝く存在なのに<草原><街角>という普通の風景に溶け込む存在とされ、<ジュピター>も<シリウス>も本来は天空にひときわ明るく光り輝く存在なのに<崖の上><水底>という見失われがちな場所に置かれる存在とされています。この発想、無名の人々の活躍への賛歌としてまさにコロンブスの卵ですよね〜。それに加えて・・・
<みんな何処へ行った 見守られることもなく>
<みんな何処へ行った 見送られることもなく>
ですから、そもそも見失われがちな存在がさらに影が薄くさせられ、もうなんともはや。
<地上にある星を誰も覚えていない
人は空ばかり見てる>
<名立たるものを追って 輝くものを追って
人は氷ばかり掴む>
それにしてもいつも思うのは、中島みゆきという存在自体は<地上の星>なんてハズもなく何十年もトップを走っている天空の星であるのに、このような歌詞を「お前が言うな」とならずに抵抗なく読ませてくれるということ。これがTwitterとかの短い文字だけだとまた違ってくるwのでしょうが、歌詞と音楽というともに抽象度が高い媒体をハンパない巧みさで操れる中島みゆきという人物だからこそにじみ出せる説得力なんだろうなと。
<つばめよ高い空から教えてよ 地上の星を
つばめよ地上の星は今 何処にあるのだろう>
この動画で使っているピアノは100年以上昔、1894年製のアンティークピアノ。このような楽器を使ってこのような曲を弾くのはまことに愉しいです。現代では世間で聞こえる音のほとんどは電気を通していますが、このころに世間で聞こえていた音は生音が主流でした。1877年にエジソンが蓄音機を実用化し、このピアノが作られた1894年にはSPレコードの大量生産ができるようになって、次第に「録音」というシロモノが世間に知られるようになった時代。こんな時代の楽器がどれほど豊かな音世界を伝えていたのか、この動画で使っている楽器は奇跡的にオリジナルほぼそのまま、まさに時代の生き証人です。
« 新河岸川の桜@川越 | トップページ | つくし煮成功〜 »
コメント