中島みゆき 作詞/作曲『ヘッドライト・テールライト』ピアノソロ:1894年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)
本日(2/23)は中島みゆきの71歳の誕生日、名曲の誉れ高くしっとりと心に染みる美しさ極まる『ヘッドライト・テールライト』を、いつもの1894年製アンティークピアノで弾きました(*´-`)
『ヘッドライト・テールライト』は2000年にリリースされたアルバム《短篇集》の最後を飾る、美しく心に染みわたる珠玉の一曲です。このアルバム《短篇集》に先だって『地上の星』そして『ヘッドライト・テールライト』がNHK総合テレビ『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』の主題歌としてオンエアされ、2曲ともアルバム《短篇集》のみに収録される予定だったところ、ファンからの要望で急遽この2曲をシングル盤として発売したとのことです。
<語り継ぐ人もなく
吹きすさぶ風の中へ
紛れ散らばる星の名は
忘れられても>
唄い出しはこんな感じでして、ごくごく少数の世に出られる存在以外のいわゆる「世間」から一瞥もくれられずに消えていく普通の人生を詠じていますね。なるほど『地上の星』と対になっている曲で、しかもちゃぁんとココに<星>の一語を入れているところ、統一感を与えるための常套手段とはいえ、なんともニクいですわ〜。
<宇宙の掌の中
人は 永久欠番>(『永久欠番』1991年)
いわゆる「名も無き存在」へのエールが中島みゆきの大きなテーマの一つであるとは、少しでも聴き込んだひとならば簡単に思いつくでしょう。この手のエールはそれこそ枚挙にいとまがございませぬ。
<足跡は 降る雨と
降る時の中へ消えて
称える歌は
英雄のために過ぎても>
やはり中島みゆきの詞には<雨>が入らないとですね〜。一個人の力でもどうしようもできないような無力感を表現するには、やはり<雨>でなくっちゃ。
<地上にある星を誰も覚えていない
人は空ばかり見てる>(『地上の星』2000年)
<星>が輝くのは<空>であり、<空>にのぼって注目されるのは<英雄>に他ならず、地上(むしろ「地べた」が適切か)を這いつくばる「名も無き存在」の<足跡>は<降る雨と 降る時の中へ消えて>しまうという、まっこと的確としか言いようのない例えではございませぬか。そう言えば、中島みゆき、こんな表現もしてましたっけね。
<どんな記念碑(メモリアル)も 雨風にけずられて崩れ
人は忘れられて 代わりなどいくらでもあるだろう
だれか思い出すだろうか
ここに生きてた私を>(『永久欠番』1991年)
時による淘汰はめっちゃくちゃ残酷で、ひととき光り輝いた存在があっという間に色褪せてしまうことのなんと多いことでしょうか。まして、光り輝かなかった存在なんぞ誰も思い出してくれようハズがございません。あぁ人生は虚しいw
<行く先を照らすのは
まだ咲かぬ見果てぬ夢
遥か後ろを照らすのは
あどけない夢>
ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらない
ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらない>
1番2番で<ヘッドライト・テールライト>を説明せずにサビとして繰り出しておいて3番で答え合わせをする・・・というアイディア、「あぁなるほど!」と誰もが得心するでしょう。夢があってこその人生というといささか重いでしょうが、なぁに、大それた夢である必要なんぞなく、自分そして近しい人たちにとってのささやかな幸せこそが<あどけない夢>なのかも知れません。このようなほんのささやかな幸せさえもがじわじわと奪われようとしている現在、せめて庶民のささやかな幸せが<見果てぬ夢>となってしまわないことを切に祈ります。
<ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ>(『ファイト!』1983年)
この動画で使っているピアノは100年以上昔、1894年製のアンティークピアノ。このような楽器を使ってこのような曲を弾くのはまことに愉しいです。現代では世間で聞こえる音のほとんどは電気を通していますが、このころに世間で聞こえていた音は生音が主流でした。1877年にエジソンが蓄音機を実用化し、このピアノが作られた1894年にはSPレコードの大量生産ができるようになって、次第に「録音」というシロモノが世間に知られるようになった時代。こんな時代の楽器がどれほど豊かな音世界を伝えていたのか、この動画で使っている楽器は奇跡的にオリジナルほぼそのまま、まさに時代の生き証人です。
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