中島みゆき 作詞/作曲『空と君のあいだに』ピアノソロ:1894年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)
中島みゆきの『空と君のあいだに』を、いつもの1894年製アンティークピアノで弾きました。
『空と君のあいだに』は、1994年発売のアルバム《LOVE OR NOTHING》の斬り込み隊長です。もともとは同年放送された日本テレビ系ドラマ『家なき子』の主題歌として書き下ろされ、このドラマの大ヒットの影響もあってかシングル《空と君のあいだに/ファイト!》は中島みゆき最大の売上枚数を叩き出しました。このドラマ『家なき子』は、主人公の少女を演ずる安達祐美の「同情するなら、金をくれ!」のセリフそして内容のかなりのエグさから、それこそ一世を風靡したと言っても過言ではないでしょう。
とはいえ、楽興製作のタイミングではよく知られるフツーの『家なき子』のストーリーの引き写しと主人公の少女が犬を連れている、という大雑把な情報だけ与えられていて、それに基づいて犬の視線の歌として作られたそ〜な。ですが『空と君のあいだに』の歌詞に入っている<僕>は犬ではない、とも後年中島みゆき本人がもらしているそうで。なんでも犬が飼い主を見上げたら空は飼い主の向こうに見えるから、その両者のあいだにいろんなことが起こるよね・・・って、ソレ、人間関係森羅万象全部じゃ〜ございませんこと?www
とかなんとか、そもそも、中島みゆき本人の解説だって(だからこそ、かもw)本心かどうかなんてわかりゃしないwワケでして、より一層妄想がふくらむんですよね〜。
<君が涙のときには 僕はポプラの枝になる
孤独な人につけこむようなことは言えなくて
君を泣かせたあいつの正体を僕は知ってた
ひきとめた僕を君は振りはらった遠い夜>
1番はこのように始まります。なんつ〜か、も〜安定の中島みゆき風味ですよね〜。この曲の歌詞、いろんな妄想をしてもイイとは思うのですけど、深読みせずに単純に味わった方が静かにしんみりできそうな気がします。そして2番の始まりは
<君の心がわかる、とたやすく誓える男に
なぜ女はついてゆくのだろう そして泣くのだろう
君がすさんだ瞳で強がるのがとても痛い
憎むことでいつまでもあいつに縛られないで>
ん〜、これまた安定の「見守る愛」ですよね〜。最後の<憎むことでいつまでもあいつに縛られないで>という着眼点、やはりさすがの中島みゆきでありま〜す。こういうアジな着眼点、ワタクシ大好きなんですよ〜(*´-`)
<空と君とのあいだには今日も冷たい雨が降る
君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる>
「家なき子」ですから、<君>という主人公の周りには理不尽なできごとばかり、その主人公を寂しくしかしずっと見つめ続ける<僕>の心の強さはいかばかりでしょう。中島みゆきは「家なき子」だから主題歌は逆に明るい調子にした、とどこぞで触れています。それなのにこのサビの部分の調性が暗く沈みやすい嬰へ短調であるのはクラシック音楽的にもフツーに的確な手法。イ長調で始めてサビを平行短調である嬰へ短調にするという王道ですから覚えやすく、シングル盤がミリオンセラーになったのも納得ですわ〜。
この動画で使っているピアノは100年以上昔、1894年製のアンティークピアノ。このような楽器を使ってこのような曲を弾くのはまことに愉しいです。現代では世間で聞こえる音のほとんどは電気を通していますが、このころに世間で聞こえていた音は生音が主流でした。1877年にエジソンが蓄音機を実用化し、このピアノが作られた1894年にはSPレコードの大量生産ができるようになって、次第に「録音」というシロモノが世間に知られるようになった時代。こんな時代の楽器がどれほど豊かな音世界を伝えていたのか、この動画で使っている楽器は奇跡的にオリジナルほぼそのまま、まさに時代の生き証人です。
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