中島みゆき 作詞/作曲『Nobody is Right』ピアノソロ:1894年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)
中島みゆきの『Nobody is Right』を、いつもの1894年製アンティークピアノで弾きました。
『Nobody is Right』は、2007年発売のアルバム《I Love You, 答えてくれ》に収録されています。この曲の歌詞はこの動画の前にアップした『ひまわり "SUNWARD"』とセットにしたくなるような意味を持っておりまして、これまた今現在ウクライナとロシアの間で繰り広げられている戦火そして双方政府による情報戦、さらにはその情報戦に踊らされて自分だけは他者と違って視野が広く聡明かつ冷静であるとアピールしたがりな知ったかぶりの数限りない烏合のネット民の虚しさを見透かしているように思えます。
*『ひまわり "SUNWARD"』
https://bergheil.air-nifty.com/blog/2022/03/post-e5c335.html
我々日本人にとって、国境が入り組んで時代によって国境線が頻繁に変わり、さまざまな民族の混在そして混血が当たり前である世界を実感を持ってイメージすることは相当に困難なはずなのに、たかだか侵攻が始まって一ヶ月ちょいの間にたまたまネットで目にした程度の情報で精査できた気になってきいた風な口を叩くなんて恥知らずと言わずして何と言う。それに止まらず、どこぞで「ウクライナに味方するようなプーチンを悪く言うような情報を選びたがる自分には注意しなければと思う」とかほざく御高説を複数拝見いたしまして、その十重二十重にネジくれた醜悪な自己愛に満ちたうぬぼれを目の当たりにした気がしてそっと閉じましたわぃ。ネット上の言論なんぞ欺瞞や偽善に満ちているというのはこの25年間思い知らされていますが、今回もまたまたま〜たまた同じですわ。
中島みゆきはこの『Nobody Is Right』を発表した2007年、インタビュー記事でこのように語ってます。
<物を求める戦争なら、いつか収まる。でも、相手が心から正しいと思っていることを否定する争いに終わりはない>
(2007年10月17日「東京新聞」)
これは狭い意味の戦争のみならず、およそ人間社会にいる限り必ずついてまわる行き違い・誤解・勘違いもろもろ全てに当てはまるのではないでしょうか。人間関係そして人間社会とはお互いの立場の数だけ異なる論理なくしては成り立たないものでして、そこに自らの信じる狭量な正義のみを振りかざして悦にいる輩のなんと多いことでしょう。
<もしもあなたが全て正しくて とても正しくて 周りを見れば
世にある限り全てのものは あなた以外は間違いばかり>
たいていの人は、程度の差こそあれ、思春期を迎えて自我を形成し始めて身の周りの小さな社会とぶつかりつつ(揉まれて、の方がイイかなw)、その中で少しずつ自らを育んでいくものではないでしょうか。そんな初期のころ、世間の不合理やら不条理やらにいちいち憤って「世の中間違っとる!」と感じる段階があること自体は、至極まっとうと思います。いつしかそれを隠しながら生きる悪知恵を身につけて(「堕落」とも言われますがねwww)世間さまに馴染むことがオトナのたしなみの一つでしょうが、まぁ、なかなか、難しい、です、よ、ね〜。
<つらいだろうね その一日は
嫌いな人しか 出会えない
寒いだろうね その一生は
軽蔑だけしか いだけない>
ここの指摘がさすがは中島みゆきで、どんなに自分が最高の存在であるという尊大な人物でもこのような感覚は持たないのではないでしょうか。まぁ逆もまた真でもあり、尊大で傲慢不遜な人物であるからこそ、このような感覚にはなり得ないのでしょうけど。「孤高の存在」になればなるほど孤独なものである、という文学的な表現もありましょうが、それこそ自分に酔っているだけのうぬぼれですナw
<正しさと正しさとが 相容れないのはいったい何故なんだ>
人はそれぞれ全く異なる存在であり、しかも自分の中ですら論理的に整合した姿勢でいられるのは極めて難しいこと、誰もが(認めたくはナイでしょうが)わかっているのではないでしょうか。それならばそれぞれの<正しさが相容れない>のが当ったり前な当然で、それぞれの<正しさが相容れない>という現実を認めない姿勢こそが、真の「相容れなさ」を生み出す元凶であります。
<争う人は正しさを説く 正しさゆえの争いを説く
その正しさは気分がいいか
正しさの勝利が気分いいんじゃないのか>
大義がありさえすれば他を打ちのめしてもいいのでしょうか、大義がありさえすれば他は我に屈服すべきと主張してもいいのでしょうか、そのような大義とはいったいなんなのでしょうか。にわかに過ぎぬ大義を振りかざして悦に入る烏合のネット民ども、うるさ過ぎますな。
<Nobody Is Right, Nobody Is Right, Nobody Is Right, 正しさは
Nobody Is Right, Nobody Is Right, Nobody Is Right, 道具じゃない>
この動画で使っているピアノは100年以上昔、1894年製のアンティークピアノ。このような楽器を使ってこのような曲を弾くのはまことに愉しいです。現代では世間で聞こえる音のほとんどは電気を通していますが、このころに世間で聞こえていた音は生音が主流でした。1877年にエジソンが蓄音機を実用化し、このピアノが作られた1894年にはSPレコードの大量生産ができるようになって、次第に「録音」というシロモノが世間に知られるようになった時代。こんな時代の楽器がどれほど豊かな音世界を伝えていたのか、この動画で使っている楽器は奇跡的にオリジナルほぼそのまま、まさに時代の生き証人です。
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