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2026年2月 6日 (金)

DIAPASON 171BG グランドピアノ 1999年製 で、フェルディナント・ヒラーの「諸相のピアノ小品集, op.66」第1集から、第2曲『ゆりかごの歌』を

DIAPASON(ディアパソン)の1999年製 171BG グランドピアノ で、フェルディナント・ヒラー「諸相のピアノ小品集, op.66」第1集から、第2曲『ゆりかごの歌』を弾きました。例によってのピアピットによるクリーニング&再調整ですぜ(*´-`)
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/387279

DIAPASON(ディアパソン)はよく知られた国産ピアノで、天才技術者の誉れ高い大橋幡岩氏の高い志を実現すべく製造されたのが始まりです。この個体は1999年製ですので浜楽商事が株式会社ディアパソンに社名変更した後の製品であり、ディアパソン独自の製造ラインでなくカワイの製造ラインでディアパソンの設計に従い製造し、ディアパソン社では最終調整のみを行っていた時代の個体です。

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

フェルディナント・ヒラー/Ferdinand Hiller(1811-1885)はフランクフルト生まれの音楽家で、その人当たりの良さから、ショパン、リスト、シューマン、メンデルスゾーン、アルカン、ベルリオーズなど、パリの社交界で数え切れないほどの友人を作っています。これら著名人との書簡は当時を知る上で大変に重要な資料となっています。

2026年1月28日 (水)

中島みゆき 作詞/作曲『童話』ピアノソロ:1894年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)で

中島みゆきの『童話』を、いつもの1894年製アンティークピアノで弾きました(*´-`)
*この編曲譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/391712

『童話』は中島みゆきの44作め(!)のアルバム《世界が違って見える日》のど真ん中に収録されています。

2020年に中島みゆきのラストツアーとして10都市11会場24公演が予定されていた『中島みゆき 2020 ラスト・ツアー《結果オーライ》』は新型コロナウイルスの拡大の影響で8公演のみで終了、幻のツアーとなってしまいました。その後人類はこの厄介極まる感染症に翻弄され続けましたが、ようやく付き合いがわかってきて世の中が落ち着いてきたタイミングの2023年3月にリリースされたアルバムが、この《世界が違って見える日》であります。このアルバムのタイトル《世界が違って見える日》から、戦争や感染症に翻弄された2020年以来数年間の人類世界を類推するのは容易でしょう。それでいながら中島みゆきの尋常ならざる洞察力は、このアルバムを前向きなものとして作ってのけたのです。

例によってですが、この曲の『童話』というタイトルから我々が単純に思い描ける程度の歌詞ではまっっったくナイところ、やはりやはり安定の中島みゆきでございますな。しかも、いかにも童話っぽいオルゴールの出だしで油断させられていきなりのロックな調子にガツンとヤラれるという瀬尾一三のアレンジもやはりむっちゃ冴えてますね〜。

 美しい物語 読み聞かせていた
  良い夢を見なさいと 寝かしつけていた
  おはなしのお終いは どれも必ず
  報われた幸せで 満ちあふれていた
  目を醒まして見るのは 片付かない結末
  どうして 善い人が まだ泣いているの
  童話は童話 世界は世界
  子供たちに何んと言えばいいのだろうか


この歌詞はヒネって読み解くようなモンじゃなく、単純にそのまま受け取るのが力量をストレートに感じ取れそうな気がします。否、いかにこの歌詞をヒネって読み解こうとしても、ここまで現実を冷酷に残酷に見据えられては、頷くより他ないでしょうね。最初の4行をひっくり返す次の2行のコントラストの強烈なことと言ったら、もう眩暈すらしますよ。実は、この5行めの<片付かない結末>の箇所で歌詞の方向性がガラッと変わると同時になかなか不思議な和音の使い方がされていまして、ここをカラオケで歌うのは至難でしょうね〜w

 勇ましい物語 悪者は倒されて
  囚われの人々は 救われて いだき合い
  穏やかな物語 長い旅路の果て
  たどり着くふるさとで 青い鳥が待っている
  目を醒まして見るのは 不思議な 現の闇
  泣き歩く人々が なぜまだ居るの
  童話は童話 世界は世界
  子供たちに何んと言えばいいのだろうか>


2番の歌詞もどストレートに現実をえぐってきますね〜。童話の中の「正義は勝つ」「戦いの果ての安寧」なんてぇのはゲンジツの人間社会のドロドロな不条理さの中では所詮は理想論にすぎず、ホント、空々しいったらありゃ〜しないですわよ。童話の中では悪は悪と決められていて正義は正義と決められていますがゲンジツにはさまざまな正義が入り乱れているワケで、両者ともに自分が信じる正義のために突き進んでいるんですよね。おりしも国会冒頭での衆議院解散で1月27日衆議院議員選挙公示、なかなかに エ ゲ つ な い 正 義 の 多 様 性 を目の当たりにして、否が応でも<童話は童話 世界は世界>だよなぁぁぁ、と感じさせられるワタクシ庶民でございますことよ😮‍💨

 童話は童話 世界は世界
  子供たちに何んと言えばいいのだろうか


結局、人間社会の中でそれぞれが生きていかねばならぬのですから、割り切るところは割り切って受け入れないとど〜しよ〜もないんですよね。現代はもはや幼いうちから社会の不条理も童話もわざわざ親から教わるまでもなく簡単に見聞きできる時代となりましたから、もはや童話を無批判に信じる子供なんて存在しないような気すらしますし、ひょっとしたら親世代よりも冷静にドライに社会の不条理を見据えているかも知れません。それはそれで親世代としては「親の心子知らず」で寂しいところですが、それでも温かい目線を若い世代に投げ掛けたいのが親世代でございますぞ。

アルバムのあとがきで中島みゆきはこう呼びかけました。これぞ親世代。

 ときには世界が180°絶望方向へ見えてしまうような
  出来事もあるけれど。
  それでも、きっと次の瞬間には、世界が180°希望方向へ
  見えて来るような出来事が、あなたにも、ありますように




この動画で使っているピアノは100年以上昔、1894年製のアンティークピアノ。このような楽器を使ってこのような曲を弾くのはまことに愉しいです。現代では世間で聞こえる音のほとんどは電気を通していますが、このころに世間で聞こえていた音は生音が主流でした。1877年にエジソンが蓄音機を実用化し、このピアノが作られた1894年にはSPレコードの大量生産ができるようになって、次第に「録音」というシロモノが世間に知られるようになった時代。こんな時代の楽器がどれほど豊かな音世界を伝えていたのか、この動画で使っている楽器は奇跡的にオリジナルほぼそのまま、まさに時代の生き証人です。

2026年1月25日 (日)

高橋HC(舟江斎)にて稽古

本日(1/25)は 来たる2月8日の クラヴィコード演奏会&試奏会 の稽古、江戸川区は船堀まで出張🍵

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やはり故高橋辰郎氏の楽器は天下一品、まぁ手ごわさも天下一品だったりもしますがw、丁寧に取り組んでいるウチに少しづつ心を開いてもらえてきているかなぁという感触はあります。

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な〜んと予定していた2台に加えてさらに2台のクラヴィコードが集結、寒い季節ですが4台のクラヴィコードが居並ぶアツいクラヴィコード祭りになりそうです✨✨✨

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2026年1月16日 (金)

BECHSTEIN 12b 1963年製 で、エスター・カーンの『舟歌』を

BECHSTEIN 12b 1963年製 で、エスター・カーンの舟歌を弾きました。例によってのピアピットの修理で、この個体は入庫したときにほとんど鍵盤が動かない状態でしたが、徹底したクリーニングと再調整とで往年の響きが見事によみがえりました。
*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

ベヒシュタインのアップライトピアノには定評があり、いかにもベヒシュタインという響きを十全に愉しめるアップライトが数多く世に出ています。そのような歴代の名器の中でもコンパクトな12nが特に有名で、この12bは12nの猫脚タイプです。

エスター・カーン/Esther Kahn(1877-1962)はオーストラリアの女性作曲家です。生まれはロンドンですが、5歳でピアニストとして公の場に登場してまもなく一家がオーストラリアに移住したため、オーストラリアで音楽を学んでいます。この『舟歌/Barcarolle』は1914年にシドニーで出版されています(・o・ゞ

2026年1月 8日 (木)

クラヴィコードコンサート&試奏会 ~ 名工・故高橋辰郎氏遺作クラヴィコード2台 ~

2月8日(日)15時開演@池袋、洋館でクラヴィコードの演奏会を行いますぞ (`・ω・´)

*:..。o♬*゚・*:..。o♬*゚・*:..。o♬*゚・*:..。o♬*゚

明日館クラヴィコードシリーズ

クラヴィコードコンサート&試奏会
〜名工・故高橋辰郎氏遺作クラヴィコード2台〜


クラヴィコードは良い楽器を生で体験する機会に
なかなか恵まれず、妙に神格化されているフシがあります。
クラヴィコードの身近で親密な一面を
フランク・ロイド・ライトによる重要文化財建築の美しさとともに!


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2026年2月8日(日)15時開演
(14時半開場・16時半終演予定)
池袋、自由学園明日館(みょうにちかん)Room1925
3000円(当日精算/要予約25名)
主催:梅岡楽器サービス
協賛:高橋HC
http://umeoka-gakki.music.coocan.jp/99_blank022.html

使用楽器
高橋辰郎 2021年作
  5オクターブ(61鍵)ブントフライクラヴィコード (2音のみ共有弦)
高橋辰郎 2019年作
  4オクターブ(51鍵)ゲブンデンクラヴィコード

プログラム
バッハ 小プレリュード BWV924, 925, 926, 927, 928, 930
アルベルティ 「8つのソナタ集 Op.1」から、第3番
モーツァルト グラスハーモニカのためのアダージョ K.356(617a)
フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブック」から『散りゆく木の葉』
グリーク 「抒情小品集」から、ワルツ Op.38-7 感謝 Op.62-2
ショパン マズルカ Op.41-1, Op.24-1
ハイドン ソナタ Hob.XVI:13


演奏会後30分ほど希望者に試奏していただけます
(多少の制限ありますがご了承くださいませ)

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2026年1月 3日 (土)

DIAPASON 183E グランドピアノ特注フレンチモデル 1986年製 で、カール・ハインリヒ・デーリンクの『6つの旋律的な練習曲集, op.306』から、第4曲 ささやく波を

DIAPASON(ディアパソン)の1986年製 183E グランドピアノ特注フレンチモデル で、カール・ハインリヒ・デーリンク『6つの旋律的な練習曲集, op.306』から、第4曲 ささやく波を弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/381074

例によってのピアピットによるオーバーホール&カスタム塗装品ですぜ(*´-`)
*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

DIAPASON(ディアパソン)はよく知られた国産ピアノで、天才技術者の誉れ高い大橋幡岩氏の高い志を実現すべく製造されたのが始まりです。この個体は1986年製ですので浜楽商事が販売していた時代の製品、この時代のカタログが出土して、特注品としてこの個体のような猫脚タイプを椅子(左側にチラッと映ってますぞ)とセットで「フレンチモデル」として販売していたことが判明しました。他にも木目仕上げや白塗装も特注品としてカタログに掲載されており、動画にカタログの一部を焼き込みましたので併せてご覧くださいませ〜。

カール・ハインリヒ・デーリンク/Karl Heinrich Döring(1834-1916)は1852年から1855年までライプツィヒ音楽院で学び、その後故郷ドレスデンに戻って1858年からはドレスデン音楽院で教鞭をとっていました。ピアノのための練習曲や練習曲、そしてアカペラ合唱曲を多数出版しています。

2026年1月 1日 (木)

中島みゆき 作詞/作曲『バクです』ピアノソロ:1894年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)で

2026年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくおつき合いのほどを。

中島みゆきの『バクです』を、いつもの1894年製アンティークピアノで弾きました(*´-`)
*この編曲譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/385285

『バクです』は2011年11月にリリースされたアルバム《荒野より》の一曲で、それに1ヶ月先立って『荒野より』とのカップリングのシングルが発売されています。2011年といえば3月11日にあの恐ろしい東日本大震災が起きた年、このアルバム《荒野より》にはそれを意識してメッセージが随所に込められているという解釈が少なくなく、それぞれに説得力ある論が展開されていて興味深いです。

この曲は中島みゆきのアレンジを長年任されて絶大なる信頼を置かれている瀬尾一三をイメージした曲とされています。瀬尾一三は1973年に『貘』というタイトルのソロアルバムを発表しており、「中島みゆきTOUR2010」のツアーパンフの「自分を動物に例えると?」という質問に「貘」と答えていたりもしますね〜。

「バク」とは漢字では「貘(獏)」で、人の悪夢を喰うといわれている想像上の動物です。もともと中国では貘が悪夢を喰うという記述はありませんが邪気を払うとはされており、それが日本に伝わったタイミングかどこかで「悪夢を喰う」と解釈されるようになったようで、室町時代末期には貘が「悪夢を喰う」という設定になっていたとのことです。いい初夢が見られるように七福神が乗る宝島の絵を枕の下に敷いて眠るという風習がありますが、江戸時代には悪い夢を喰ってくれる「貘」の字を宝島の帆の部分に書くことがあったとか。

 バクです バクです 今の今からバクになる
  バクです バクです バクになることに したんです


最初に主人公が<バクになることに したんです>と決意表明していますが、コレって悪夢を食べる存在になるという決意表明ですから、優しく無邪気そうな声色とは裏腹にちょ〜っと穏やかならざる雰囲気を感じてしまいませんか?

 あんたの 悪い夢を喰っちまいます
  あんたの 怖い夢を喰っちまいます
  あんたの つらい夢を喰っちまいます
  あんたの 泣いた夢を喰っちまいます


これぞ中島みゆきによる悪夢諸相、これら全部(いや、もっといろいろ)を<喰っちまう>存在になろうとしているのですから、実はなみなみならぬ悲壮な覚悟だったりするのですぞ。バクは悪夢を喰う設定な想像上の動物ですが、それだけに終わらせずに悪夢を喰ったバクがどうなるのかに眼差しを向けるところ、も〜いかにも中島みゆきならではの穿ちかたですね〜。

 <バクはまったく平気なんです 痛くもかゆくもないんです

ほらね。いくらバクが夢を喰う想像上の動物でも、バクになった主人公が<あんた>の悪夢全てを喰い続けて<痛くもかゆくもない>ハズはございません。<痛くもかゆくもないんです>ってわざわざ言うってぇコトは一種の自己暗示、まぁかゆくはないかもしれませんがw、ホントはすっっっごく痛いんですよ〜💦

 腹いっぱいになりすぎたなら ふわりふわりと浮きそうだ
  そしたらバクは夢を見るんだ そしたらバクは夢を見るんだ
  笑ってるあんたの夢を見る


バクになった主人公は<あんたの>悪夢を喰ってすっっっごく怖く、つらく、泣きたいはずなのに、<ふわりふわりと浮きそうだ>と。こりゃ〜カラ元気でしょうが、<腹いっぱいになりすぎたなら>眠くなってふわりふわりと夢の世界にいざなわれることもまた確かですな。それでいながらバクになった主人公の見る夢は<笑ってるあんたの夢>なのですから、<ふわりふわりと>軽く実態感のない夢の中であっても、ど〜しようもなく寂しい。あんたの悪夢を喰って<笑ってるあんた>を実際に見ているのではなく<笑ってるあんた>を夢の中で見ているのですから、その<笑ってるあんた>は夢から覚めたら消えてしまうんですよ〜〜〜😭

だいたいそもそも、夢を喰らうバクが夢を見るところからしてめっちゃネジくれてまして、この『バクです』でバクが見ている夢は実は寝ている時に見る夢であると同時に、「あんたのバク」になろうと決意した主人公の「あんた」へ向ける切なる願い、とも読めます。「夢」とはこのように二面性を備える単語で、「願い」を「夢」と読み替えるとき、往々にしてその願いが叶う可能性は低いワケです。主人公から<あんた>への切なる願いは<>ですから、叶う可能性はかなり低いのです。いやはや、ホントに、泣けますね。

そういえば、中島みゆきは《CONCERT'95 LOVE OR NOTHING》の舞台で

 <夢は、叶った方がいいです。でも叶わない夢もあります。
  姿を変えでもしない限り、叶いようのない夢もあります。
  だからどんなに、姿形を変えようとも、どんなに傷ついてでも、
  あなたの夢がいつか叶いますように>


と言ってましたっけ。1995年は阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が立て続けに起こった年、この言葉が呼び覚ましてくれる何かはただひたすらに大きいです。それにとどまらず、2011年の東日本大震災があって最初にリリースしたのが『荒野より』と『バクです』とのカップリングのシングルですから、ここにも深く重いメッセージを感じます。一流の芸術家は常人の浅知恵が及びもしないほどの関連づけ・意味づけを行う存在ですから、これが偶然であろうハズがないのではないでしょうか。

 あんたの 悲しいことを喰っちまいます
  あんたの 寂しいことを喰っちまいます
  あんたの 苦しいことを喰っちまいます
  あんたの 痛いことを喰っちまいます


2番ですが、1番を「あんたのバク」になろうと決意した主人公の心の痛みの現れと読んでしまうと、<悲しい><寂しい><苦しい><痛い>と繰り返されるだけで胸が締めつけられます。<こと>は「夢」をさらに抽象化させており、ここで「夢」を「願い」と置き換えると

 <あんたの 悲しい願いを喰っちまいます
  あんたの 寂しい願いを喰っちまいます
  あんたの 苦しい願いを喰っちまいます
  あんたの 痛い願いを喰っちまいます>

となり、「あんたのバク」になろうと決意した主人公は、願いを果たせなかった<あんた>の痛みを自らの痛みとして受け入れる存在となったのです。

 バクはまったく悪もの喰いで 何んでも彼んでも喰うんです
  心配されても その心配さえ うまいうまいと喰いそうだ
  バクは1人で喰い続けてる バクは1人で喰い続けてる
  笑ってるあんたの夢を見るまで


2度繰り返される<バクは1人で喰い続けてる>がめ〜っちゃグッときますね。主人公は<あんた>の痛みを自らの心の痛みとして受け入れて、それだけでなく願いを果たして<笑ってるあんた>になって欲しいと切に願い続けているのでしょう。この一連の最後は倒置法で、平易に直すと
 笑ってるあんたの夢を見るまで
  バクは1人で喰い続けてる


ですね。1番では腹いっぱいになって笑ってるあんたの夢を見るだけですが、2番では<笑ってるあんたの夢を見るまで><1人で喰い続けてる>のですから、このバクの寂しさたるやいかばかりでしょう。

 バクの上に夢よ降り積め あんたの捨てたい夢よ降れ

三好達治の『雪』ですね。『雪』はたった2行だけの詩ですが、この一度見たら忘れられない強い印象は一体全体ナンなんでしょうね。1927年の発表ですから、な〜んと100年前😳

 <太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
  次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。>
(三好達治『雪』1927年)

バクの上に降り積むのがあんたの悪夢であってそれを腹いっぱいに喰ったバクが寝るのですから、ここでは三好達治の『雪』を<>に読み替えて読み手の妄想をふくらませているのかも。それにしても、この<あんたの捨てたい夢よ降れ>を『バクです』の歌詞の中にどう位置づけるかの難しいこと難しいこと😅

 <あんたの捨てたい悪夢よ バクの上に降れ、降り積もれ>
を倒置法を交えて詩的に表現して、悪夢より抽象的かつ二面性を備える<夢>を用いることで<あんたの捨てたい夢>を「あんたが果たせなかった願い」と読ませるのでしょうか。「あんたのバク」になった主人公は、<あんた>が願いを果たせるまでただひたすらに待ち続ける存在なのでしょう。中島みゆきの楽曲には聴き手に対して力強くエールを送る歌詞が多いですが、この『バクです』はただひたすらに待つことで<あんた>が象徴する聴き手ひとりひとりにエールを送る曲なんですね。傷つきながらも優しく無邪気そうな声色でただひたすらに待つ存在、なるほど、ひとの悪夢を喰ってくれるバクに相応しいです。

さて、今さらですが、『バクです』を瀬尾一三との連関として読み直してみましょう。
アレンジャー/プロデューサーとは欠くことができない大切な立ち位置であると同時に、創作者であって創作者ではないという微妙な立ち位置でもあります。1973年にソロアルバム『貘』を出すも必ずしも商業的成功は得られずにアレンジャー/プロデューサーに転身して大成功を収めた瀬尾一三、なるほど、中島みゆきという創作者が笑えるまでとことんその<>=願いを喰い続けてくれる「」ですね。ただ寂しく待つだけでない、能動的にあんたの夢を喰い続ける「貘」が瀬尾一三なのでしょう。

 バクは1人で喰い続けてる バクは1人で喰い続けてる
  笑ってるあんたの夢を見るまで


実は、クラシック音楽を演奏するってぇコトも基本的には他人の創作物を演奏するのですから、創作者であって創作者でない立ち位置なんですぜ💡

今年(2026年)もよろしくお願いします。さぁ、あんたの初夢が悪くなくても喰っちまいましょかね😎



この動画で使っているピアノは100年以上昔、1894年製のアンティークピアノ。このような楽器を使ってこのような曲を弾くのはまことに愉しいです。現代では世間で聞こえる音のほとんどは電気を通していますが、このころに世間で聞こえていた音は生音が主流でした。1877年にエジソンが蓄音機を実用化し、このピアノが作られた1894年にはSPレコードの大量生産ができるようになって、次第に「録音」というシロモノが世間に知られるようになった時代。こんな時代の楽器がどれほど豊かな音世界を伝えていたのか、この動画で使っている楽器は奇跡的にオリジナルほぼそのまま、まさに時代の生き証人です。

2025年12月26日 (金)

YAMAHA U3B 山口正城モデル 1960年製 で、パデレフスキの『旅人の歌, Op.8』から第3曲を

1960年製の YAMAHA U3B 山口正城モデル で、パデレフスキの『旅人の歌, Op.8』から第3曲を弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/385835

例によっての ピアピット のオーバーホールですが、弦交換ハンマー交換などの過程でなんと巻弦の長さが普通のU3と異なることが判明、奥行きの大きな本体設計とも相まってでしょうか、十二分に充実して味わい深い響きが甦ってビックリ(*´-`)
*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

このデザインは長年根拠なく憶測でレーモンドによるデザインとされていましたが、近年YAMAHAが特許庁の意匠登録データなどを精査し直した結果、代表デザイナーを示す「意匠考案者」が工業デザインの重鎮の千葉大教授だった山口正城氏(1903-1959)であったことが再発見されました。なお「意匠考案者」がレーモンドだった機種は、アップライトの一機種だけだった由。
・毎日新聞 2023/3/19 09:30
https://mainichi.jp/articles/20230315/k00/00m/040/317000c?fbclid=IwAR2ie2YkxgX8M8xaYgGD6qQrPO5cw7kpsfi47OYWQocs7joepzTgvbSzyUo

作曲のパデレフスキ/Ignacy Jan Paderewski(1860−1941)はポーランドの偉大な巨匠ピアニストの一人で、かつ、第一次世界大戦後に独立を回復したポーランドで首相と外務大臣を兼務しています(1919年1月〜11月)。また「一日練習をサボると自分に分かる。二日サボると批評家に分かる。三日サボると聴衆に分かってしまう。」という言葉も有名ですね〜(・o・ゞ

2025年12月19日 (金)

YAMAHA W101 1974年製 で、ネルクの「易しい旋律的小品集, op.166」から、第1曲『バラの花のもとで』を

1974年製ごく普通の YAMAHA W101 で、ネルクの「易しい旋律的小品集, op.166」から、第1曲『バラの花のもとで』を弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/382335

1974年は昭和49年ですからピアノ業界に限らず日本全体が活気に満ちており、そんな時代にしっかり作られた個体です。少し明るめで素直な音の伸びがちょっとおしゃれなこの姿でよりイイ感じになってますね〜(*´-`)
*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

August Nölck(1862−1928)は、ハンブルクの音楽院で学びドレスデンで活躍していた作曲家、チェロの名手で同時にピアニストでもありました。チェロの作品が多数を占めますが、この「易しい旋律的小品集, op.166」は聴きやすく弾きやすく親しみやすいピアノ作品集ですよ〜(・o・ゞ

2025年12月13日 (土)

リントホルムの1段チェンバロで、フィッシャー「音楽のパルナス山」第1組曲『Uranie』から「サラバンド/Sarabande」を

おそらく50年ほど昔のLINDHOLM/リントホルム製の1段チェンバロの音です。

現代では古楽器の研究が進んで一般的な理解も追いついてきて、ヒストリカルな工法による楽器を耳にすることがごくごく普通のこととなりましたが、ものの半世紀ほど昔のだいたい1960〜80年あたりはなかなかバリエーション豊かな時代でした。チェンバロは現代の楽器に比べると当然ながら「弱い」ワケでして、20世紀後半という時代には「商品」として通用しないと考えられたのでしょうか、ヒストリカルな雰囲気を持たせながらも強固な構造を持ったチェンバロも一定のシェアを確保していました。

このリントホルムの楽器もそのような存在の一つでして、なんと膝で操作する4フィート弦(=1オクターブ上の弦)のon-offレバーが搭載されています。このようなレバーは実はヒストリカル楽器にも少数ありましたが、それをコピーしたわけではなく独自な頑丈なレバーですね〜👌

この楽器は古楽器も製作するわパイプオルガンも弾いてしまうわな調律師の嶋田ひろみさんが、またまた例によっての印西市のピアピットで作業している楽器です。たまに見学もできますので、ご覧になりたい方はピアピットまでご連絡くださいましね〜。
*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

まぁこのような世界が「キワモノ扱い」されること自体は仕方ないこと。ですが、文化・芸術を醸成するにあたっては入り口の多様性ってか〜なり大切なハズでして、このような存在はついつい紹怪したくなってしまうのがワタクシでありま〜す。廻り道って、むっちゃオモシロいと思いませんこと?ヽ( ̄▽ ̄)ノ

2025年12月 7日 (日)

1949年製 GULBRANSEN/ガルブランセンのスピネット型ピアノ で、アルベルト・レシュホルン「30の旋律的練習曲集, op.52」第5番を

GULBRANSEN/ガルブランセンのスピネット型ピアノ 1949年製 で、アルベルト・レシュホルン/Albert Loeschhorn(1819-1905)の「30の旋律的練習曲集, op.52」第5番を弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/381075

GULBRANSEN/ガルブランセンは1904年シカゴ創業のアメリカのピアノメーカーで、20世紀初頭のアメリカピアノ業界に大きく貢献しました。第二次大戦後にこのような小型のタイプを製造し「America's Smartest Piano Fashons」と謳って販売していました。この個体は進駐軍の調律の仕事を行なっていた鶴見にあった『大塚ピアノ社』が扱っており、進駐軍が新品で日本に持ってきて置いていったものと推測されます。
*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

アルベルト・レシュホルン/Albert Loeschhorn はベルリンの王立教会音楽学校でピアノを教えており、ピアノ用の練習曲と発表会用の小品でそれなりに知られています。

2025年12月 5日 (金)

1968年製 ATLAS 300 で、アレクシス・ホレンダー「サラバンドとガボット Op.23」から第1曲『サラバンド』を

ATLAS 300 1968年製 で、アレクシス・ホレンダー/Alexis Hollaender(1840-1924)の「サラバンドとガボット Op.23」から、第1曲『サラバンド』を弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/381081

ATLAS/アトラスは1960年代から1970年代にかけての押しも押されもせぬド中堅ピアノメーカーでやはり良い時代の品物、いつものピアノ工房ピアピットのクリーニングと再調整で落ち着いた鳴りが甦りましたぞ。
*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

アレクシス・ホレンダー/Alexis Hollaender(1840-1924)は、シレジア(ポーランドとチェコの国境付近)生まれの音楽一家の一人で、1875年にときのドイツ皇帝ヴィルヘルム1世から王立音楽監督の称号を授けられています。

2025年12月 2日 (火)

中島みゆき 作詞/作曲『昔から雨が降ってくる』ピアノソロ:1894年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)で

本日(12/2)はワタクシの60回めの誕生日、いろいろありつつも59歳を迎えることができました。

さて恒例の中島みゆき、『昔から雨が降ってくる』をいつもの1894年製アンティークピアノで弾きました(*´-`)
*ワタクシの編曲譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/379184

『昔から雨が降ってくる』は、2007年4月15日にリニューアル再スタートしたMBS/TBS系ドキュメントバラエティ番組「世界ウルルン滞在記“ルネサンス”」のエンディング曲です。同番組のオープニング曲『一期一会』とともに2007年7月にシングルが発売、そして同年10月に発売されたアルバム《I Love You, 答えてくれ》のラストから2曲めの所収です👌

この曲ってば、そもそも題名が謎かけで考えさせられますよね〜。「雨が降っている」ではなく「雨が降ってくる」ですから、単純な「昔から雨が降り続けている」にとどまる程度の題名ではございませぬぞ。これ、言うなれば「昔降っていた雨がそのころの降り方そのままに、現在の我々にも降って来ているのだ」という、悠久の時の流れを象徴するまことに大きな題名だと思います。この意図を明解にしたいならば『雨が昔から降って来る』とするのが妥当でしょうが、こんなきっちりした題名な雨の降り方では詩的な情感もへったくれもなく、<なつかしく降ってくる>なぁんて情緒とはおよそ無縁になりますなw

 あの雨が降ってくる
  僕は思い出す
  僕の正体を
  昔から降ってくる
  なつかしく降ってくる


だからこそのこのサビで、前世やそれ以前に<>が体験していたであろうさまざまを<あの雨>で象徴しているワケであります。現代に降っている雨は実は太古からの雨でもあり、これすなはち「時は循環して連続する」という、中島みゆきの楽曲に頻繁に登場する「輪廻転生」に通じる考え方でありましょう。そしてそれは、あらゆるひとの一生の中で育まれている過去から現在そして未来への人生行路をも象徴しており、転じて他者と人生体験を分かち合うところにまで想いを馳せたくなるような気にさせられますね〜💡

 昔、僕はこの池のほとりの
  1本の木だったかもしれない
  遠い空へ手を伸ばし続けた
  やるせない木だったかもしれない


やるせない【遣る瀬ない】とは辞書によると、憂い・悲しみを紛らわそうとしても、晴らしどころが無(くて、せつな)いという意をもちます。樹木は大地にどっしり根を下ろす力強く雄大な象徴であるばかりでなく、この1番の歌詞では遠い空に象徴される手の届かない存在に対するやるせなさの象徴。ある程度長く人生を経験していれば、誰しもこのような感情に駆られる時があっても仕方ないでしょう。まことに印象的な起承転結の「起」ですね。

 昔、僕はこの海のほとりの
  1匹の魚(うお)だったかもしれない
  話しかける声を持とうとした
  寂しがる魚(うお)だったかもしれない


魚は水中に生きる存在で、なるほど、いかにも声は出せなさそうですし、よしんば声を出せたとしても人類には聞こえないでしょうね。魚にとっての声に象徴される持ちたくても持ち得ない何かを持てずに寂しがる様子、これまたある程度長く人生を経験していれば、誰しもこのような感情に駆られる時があっても仕方ないでしょう。1番の<やるせない>を受けた2番の<寂しがる>が中島みゆきらしさ充分な、起承転結の「承」でしょう。

 昔、大きな恐竜も
  昔、小さな恐竜も
  同じ雨を見あげたろうか
  同じ雨にうなだれたのだろうか


この1連の前に穏やかな間奏が入り、ここで<恐竜>が入る2段だけ変ト長調(フラット6個)からニ長調(シャープ2個)への転調をぶっ込んでくる、というなかなか衝撃的な技術(実は単なる長三度下降にすぎないのですが)。ニ長調はフラットで書き換えればフラット10個の重変ホ長調で、ショパンならシャープでなくフラットで書いただろうなと思って楽譜にするときにチト迷ったのはココだけのハナシwww。太古から流れ続けている悠久の時の流れ、そして今も昔も変わらぬ喜怒哀楽・毀誉褒貶な人間模様に想いを馳せられる、名実ともに起承転結の「転」ですな。

 昔、僕はこの崖の極みの
  1粒の虫だったかもしれない
  地平線の森へ歩きだした
  疑わない虫だったかもしれない


ここまでの3連は<やるせない>とか<寂しがる>とか<うなだれた>とか、半端なく美しいのにどうにもこうにも後ろ向きで忸怩たる雰囲気に満ちていますが、ここで満を持して前に進む<1粒の虫>の登場であります。この将来に対する期待に満ちた高揚感、少し前に動画を出しましたねん😛

 砂は海に海は大空に
  そしていつかあの山へ
『小石のように』1979年)

この<1粒の虫>の一連で落ち着いた変ト長調からスッと半音上げて前向きなト長調に転調しており、曲も歌詞もグッと前向きに進むように書かれています。ほ〜んと、お手本のような起承転結の「結」ですね〜。我々は悠久の時の流れの中では一粒の虫に過ぎない存在でしょうけれど、昔から降ってくるあの雨を感じられる我々は、もはや単なる虫ではございませぬ💪

 あの雨が降ってくる
  なつかしく降ってくる



この動画で使っているピアノは100年以上昔、1894年製のアンティークピアノ。このような楽器を使ってこのような曲を弾くのはまことに愉しいです。現代では世間で聞こえる音のほとんどは電気を通していますが、このころに世間で聞こえていた音は生音が主流でした。1877年にエジソンが蓄音機を実用化し、このピアノが作られた1894年にはSPレコードの大量生産ができるようになって、次第に「録音」というシロモノが世間に知られるようになった時代。こんな時代の楽器がどれほど豊かな音世界を伝えていたのか、この動画で使っている楽器は奇跡的にオリジナルほぼそのまま、まさに時代の生き証人です。

2025年11月29日 (土)

1975年製 RED OCTOBER / Красный Октябрь / レッドオクトーバー 120cm で、ゲオルギー・コニュス「3つのミニアチュア, op.18」から第2曲『哀しきうた』を

1975年製 RED OCTOBER / Красный Октябрь / レッドオクトーバー 120cm で、ゲオルギー・コニュス「3つのミニアチュア, op.18」から、第2曲『哀しきうた』を弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/377752

RED OCTOBER / Красный Октябрь / レッドオクトーバーとはソ連時代のレニングラード(現:サンクトペテルブルク)のピアノメーカーで、かなり手広くさまざまな機種を製造していました。もともとは1841年創業の Jacob(Yakov) Becker/ヤコブ・ベッカー社という一大メーカーでしたが、ロシア革命以降にそのへんのメーカーを寄せ集めて国有化されたのがレッドオクトーバーであるようです。ロシア十月革命10周年を記念して国有化再創業、という説明もネット上に発見できましたが、真偽のほどは定かではございません😅

この個体は20年ほど前に一度オーバーホールされており、修復前でも十二分に豊かな鳴りでした。クリーニングと再調整で堅実な機構を取り戻し、社会主義国の常でいかにも発展しなかったであろう古色蒼然たる響きがより活きるようになった気がします。動画内に焼き込みましたが裏に貼られたラベルに「пианино ноктюрн」とありまして、これは「アップライトピアノ ノクターン」という意味ですので、この120cm茶色の機種名または愛称が「ノクターン」だと思われます💡

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

Georgy Konyus/ゲオルギー・コニュス (1862-1933) は、フランス系ロシアの音楽理論家、作曲家です。チャイコフスキーに高く評価され、皇帝からの年間1200ルーブルの奨学金を獲得させたほどの実力者でしたが、忘れ去られてますね〜(・o・ゞ

2025年11月21日 (金)

1988年製 APOLLO SR565 で、オットー・ドレーゼル「4つのピアノ曲集, Op.5」から第1曲『子守歌』を

1988年製の APOLLO SR565 という、左ペダルがグランドピアノと同じく鍵盤が右に動くという機構のピアノで、オットー・ドレーゼルの「4つのピアノ曲集, Op.5」から第1曲『子守歌』を弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/366874

この機構はアポロが1985年に開発した「ASS」=「アクション・スライド・ソフト」というもので、曲もこれが活かせるように左ペダルをしっかり使う曲にしました。

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

オットー・ドレーゼルは、ドイツ生まれのアメリカの作曲家です。1848年以降にそれまでより速く安全な蒸気船の普及がきっかけでヨーロッパ、特にドイツ出身の音楽家がアメリカに渡って指導や演奏を行うようになり、ドレーゼルもまさにその1848年に渡米しています💡

2025年11月14日 (金)

1965年製 YAMAHA No.G2 で、モシュコフスキー「愛しき小品集, op.77」から第9曲『メロディー』を

YAMAHAのNo.G2の古い1965年製モデルでモシュコフスキーの「愛しき小品集, op.77」から、第9曲『メロディー』を弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/377040

YAMAHAらしい堅実な構造は60年経ってもビクともせず、いつものピアノ修理工房ピアピットの響板塗り替えを含めた徹底したオーバーホールで、古い楽器特有の落ち着いた雰囲気になりました(*´-`)

*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

作曲のモシュコフスキー/Moszkowski(1854-1925)はポーランド出身のユダヤ系ピアニスト、作曲家、指揮者で、有名でカッコいい『15の練習曲/15 Études de virtuositié op.72』の作曲者として知られます。かなりの数のピアノ曲を作曲していますが、数えるほどの曲しか知られていないのがか〜なりもったいない作曲家ですぞ💡

2025年10月31日 (金)

中島みゆき 作詞/作曲『ピエロ』ピアノソロ:1894年ベーゼンドルファー社製ピアノ(ウィーン式アクション/85鍵)で

中島みゆきの『ピエロ』を、いつもの1894年製アンティークピアノで弾きました(*´-`)
*ワタクシの編曲譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/372721

『ピエロ』は1979年9月21日にリリースされたシングル《りばいばる/ピエロ》のB面です。『ピエロ』は根津甚八への提供曲で、なんとこちらも同じキャニオン・レコードから同じ1979年9月21日にシングル《ピエロ/まだ浅い別れ》としてリリースされています。根津甚八の方も YouTube に転がっているので聴いてみましたが、さすがさすがの舞台人の歌、語り口がバツグンでございましたぞよ〜👌

 思い出の部屋に 住んでちゃいけない
  古くなるほど 酒は甘くなる
  えらそうに俺が 言うことでもないけど
  出てこいよ さあ 飲みにゆこうぜ


この『ピエロ』の歌詞の情景描写は単純ですが描かれている人間関係はなかなかシビれますね〜。フラれて手酷く傷ついた心を癒せずに幸せだった<思い出の部屋>という世界に閉じこもってしまっている女性、そしてその女性に片想いし続けていて気が気じゃないと思いつつもチャンスと狙っている<>という関係。失恋は立ち直ってこそ人生の糧となり得る経験ですが、立ち直れないままに思い出に浸って心を麻痺させてしまうのは危うい、ということを<古くなるほど 酒は甘くなる>と表現しており、同時にすぐ後に現れる<麻酔>の伏線としています。この中島みゆきの言葉の切れ味、いつもながらですがもぅさすがとしか言いようがないですね〜。片想いの相手が失恋したらチャンスと思うのはごくフツーと思いますがw、それにしても主人公の<>ってば、ほんとにホントに優しすぎるオトコですな😅

 かまれた傷には 麻酔が必要
  俺でも少しは 抱いててやれるぜ


コレ、要は「どうした? ハナシ聞こうか?」であわよくば、という単純なネタでしょうが、そこに<>と<麻酔>とを掛けるという歌詞のテクニックをしれっとぶっ込むセンスに脱帽ですわよ。

 思い出の船を おまえは降りない
  肩にかくれて 誰のために泣く
  まるで時計か ゆりかごみたいに
  ひとりで俺は さわぎ続ける


優しすぎる主人公のせいなのか、女性にとっての<思い出>があまりにもよろしかったからでしょうか、主人公の心配も期待も虚しく空回りし続けているようです。<時計>は時間の経過と同時にその無情さも象徴しており、<ゆりかご>は<思い出の船>を揺らす波であると同時に女性の心を動かそうと孤軍奮闘する主人公の心の動き。<ひとりで俺は さわぎ続ける>は、まさに主人公が女性が受けた失恋の痛手をどうにかして癒し忘れさせようと孤軍奮闘している様子。同時に、<時計>と<ゆりかご>とは同じ運動を繰り返す存在で、主人公の心配も期待も虚しく空回りし続けていることも象徴していたりしますね。これぞ題名の『ピエロ』=道化、という、表面はおどけて見せていても内面にはなんとも言いようのない哀しみそして翳りを抱えている存在、癒し手になりたくても果たせない恋の痛みを抱えている存在、ピエロの輪舞から抜け出せない存在でありま〜す💡

 飲んでりゃ おまえも うそだと思うか
  指から 鍵を奪って
  海に 放り投げても


この一連は難しいですが、まずは単純にココは倒置法ですから・・・

 指から 鍵を奪って 海に 放り投げても
  飲んでりゃ おまえも うそだと思うか


となり、<>とは<思い出の部屋/船>の鍵。その鍵をおまえの指から奪って海に放り投げるのですから、女性を閉じこもった殻の外に連れ出せて(=出てこいよ)、首尾良く失恋の痛手を癒すことができた(=かまれた傷には 麻酔が必要)、という状況を主人公が仮定というか妄想していると読みます。そして、<うそだと思うか>の「か」は反語ではなく詠嘆をあらわす終助詞「か」と読みます。しかし悲しいかな、その仮定・妄想の中であっても女性がかけられた麻酔のような何かは<かまれた傷>だけに効くワケもなし、主人公が失恋の痛手を癒してくれたということにも効いてしまって<うそだと思>われてしまうんだろうなぁぁぁ=<>の片想いは結局は女性に通じないんだろうなぁぁぁ、というな〜んともやるせなく逡巡する主人公の心でありますことよ(詠嘆)

ここで思い出すのは

 二人だけ この世に残し
  死に絶えてしまえばいいと
  心ならずも願ってしまうけど
  それでもあなたは 私を選ばない
『この世に二人だけ』1983年)



この動画で使っているピアノは100年以上昔、1894年製のアンティークピアノ。このような楽器を使ってこのような曲を弾くのはまことに愉しいです。現代では世間で聞こえる音のほとんどは電気を通していますが、このころに世間で聞こえていた音は生音が主流でした。1877年にエジソンが蓄音機を実用化し、このピアノが作られた1894年にはSPレコードの大量生産ができるようになって、次第に「録音」というシロモノが世間に知られるようになった時代。こんな時代の楽器がどれほど豊かな音世界を伝えていたのか、この動画で使っている楽器は奇跡的にオリジナルほぼそのまま、まさに時代の生き証人です。

2025年10月30日 (木)

世にも静かな洋館LIVE 盛会御礼

本日(10/30)の池袋、自由学園明日館での『世にも静かな洋館LIVE』は盛会のうちに終了、いつもありがとうございます〜🙇🏻

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自由学園明日館は池袋の猥雑とさえ言えそうな雑踏から7〜8分離れるだけですが、ま〜るで別世界。100年ちょい昔の重要文化財の建物の限られたスペースで、我がモーツァルトの旅行用クラヴィコードはいつもながら生き生きと鳴ってくれましたぞ✨

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ますますメンドくさくなっているこの国ですが、ここだけはユルく温かいままであり続けてほしいですね〜🐌

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2025年10月29日 (水)

1960年製 ETERNA/エテルナ E3A で、エルネスト・ドランゴーシュ「3つの作品, op.27」から、第1曲『慰め/Consolación』を

1960年製 ETERNA E3A で、エルネスト・ドランゴーシュ「3つの作品, op.27」から、第1曲『慰め/Consolación』を弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/366872

ETERNA/エテルナはヤマハ傘下の天龍楽器製造株式会社の自社ブランドです。天龍楽器はこの個体が製造された1960年少し前からヤマハの下請けとなっており、初期のヤマハOEM品とみなして差し支えないでしょう。弦・ピン・ハンマー交換もバッチリ決まって、量産前の国産ピアノらしくこの個体もなかなか密度の詰まったしっかりした音色ですよ〜👌
*ピアノ工房ピアピット(千葉県印西市)
ピアノは本気で直せば古いピアノでも必ずよみがえります
http://www.piapit.com/repair.html

Ernesto Drangosch/エルネスト・ドランゴーシュ (1882-1925) はアルゼンチンのピアニスト・作曲家です。ドイツ留学で実力をつけ、アルゼンチン初のピアノ協奏曲も作曲しています(・o・ゞ

2025年10月25日 (土)

1981年製 KAWAI KG-5C で、コルニロフ「3つの前奏曲」から第3曲を

1981年製 KAWAI KG-5C で、コルニロフの「3つの前奏曲」から第3曲を弾きました。
*楽譜はこちらから入手できます
https://store.piascore.com/scores/371895

ピアノ修理工房はこだわりがハンパないとこが少なくないですが、このピアノを偏執的探究心のカタマリ(褒め言葉w)をもってして仕上げた埼玉は春日部の「シオンピアノ工房」のこだわりの方向性、包括的理論的論理的かつ極めて明快なところがまことに小気味良いです。無論、技術的にも安定安心最優秀レベルなのは言わずもがな。まさかこのテのピアノがこんなにもイイ感じになるのか〜?! というピアノを見せつけられるのが毎回めっちゃ新鮮✨ 今回の個体は昔のカワイにありがちなボタ重く鈍重な弾き心地をできるだけ「弾きやすく」という依頼で、まぁよくもここまで追い込みやがれるんだなぁぁぁ、と呆れさせてもらえるのがさすがの変態工房(褒め言葉www)。
*シオンピアノ工房
http://zionpiano.starfree.jp/

この個体は旧式のシュワンダー式アクションが搭載されており、設計当時の標準もま〜るでイケてなかったとのことで、それでは新品当時に戻すという並みのオーバーホールでは鈍重さが解消できないのが道理。カワイの旧式のシュワンダー式アクションは現代標準のヘルツ式アクションと寸法が異なっており、単純に載せ替えることが原理的に不可能で改造を伴わねばならぬという、アクション機構のなかなかヤヤこしいテコの関係を極めて真っ当に正しく理解していなければ手も足も出ないであろう改造を見事に成功させていたように感じました(さすが変態工房wwwww)。

無論、この時代のカワイですから楽器自体の性能も限られていていろいろと限界が早いのは仕方ないのですがなかなかの雰囲気が出せて、この時代のカワイってば楽器の共鳴箱自体は案外と悪くなかったのね〜、とビックリでございました😳

«1972年製 DIAPASON No.125M3 で、フレデリック・ルイス・リッター「8つのピアノ小品, Op.5」から第3曲『秋の歌』を

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